第二幕その二
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第二幕その二
「他に何かあるのですか?」
トゥリッドゥは彼の目を見て問う。
「俺の酒を受けない以外は」
「俺にか?」
「ええ」
彼は頷いてみせた。
「何か言うことは?」
「ないね」
彼は素っ気無く、だが敵意に満ちた声で返した。
「けれどわかっている筈だ」
「確かに」
言う必要はなかった。互いの態度でそれはわかっていた。
「ではケリをつけますか」
「何時だ?」
「今にでも」
「わかった。それでは」
「はい」
トゥリッドゥはゆっくりと立ち上がった。そしてアルフィオの方へ歩いて行く。
アルフィオはその彼をまんじりと見据えている。引き下がることはなかった。
二人は抱き合った。トゥリッドゥはアルフィオの右の耳を噛んだ。
これはシチリア独特の儀式である。決闘を申し込む時にはこうするのだ。
「やはり」
「何てこった」
村人達はそれを見て嘆きの声をあげた。
「復活祭の日に」
「恐ろしいことが」
「わかったよ」
アルフィオはそれを受けてトゥリッドゥに対して言う。
「あんたの心意気がね」
「非が俺にあるのはわかっているさ」
トゥリッドゥはそれは認めた。
「だがもう後はないぞ」
「それもわかっている。けれど俺は死ぬわけにはいかないんだ」
「それは俺も同じだがね」
「犬みたいに殺されるかも知れない。けれどサンタの為に」
思わず出たのはローラではなかった。さっき罵った筈のサントゥッツァのことだった。それがどうしてなのかは彼にもわかりはしなかった。
「俺は・・・・・・」
「あんたの事情はわかった」
アルフィオは冷たい声で返した。
「だが。わかっているな」
「ああ。決闘だったら」
「どっちが生きるか」
「どっちが死ぬかだけだ。俺もシチリアの男だ、わかってるさ」
「よし」
これで決まりであった。
「そこの野菜畑の裏で待ってるからな」
「すぐに行くよ」
「銃でいいな」
「どれでもいいさ」
「よし」
二人はそう言い合って別れた。勝敗はトゥリッドゥにはわかっていた。アルフィオは村一番の銃の名手だ。トゥリッドゥも軍でそれを習ったがとても適うものではない。彼の性格からしておそらくは。
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