20話「ヒトでないもの」
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達など一瞬で殺されるのがオチである。
それは遣い魔なら皆生まれながらに知っていることなので、魔人の前でそんな無様なことをすることはない。そしてだんだん、遣い魔も話をする相手聞く相手を限るようになる。
つまり、主人或いは自分にとって、必要な情報のみを選別して生きていくのだ。
ゆえに、アシュレイは、人間が生活する上での、その他人と他人の距離の近さに、ひどく違和感を覚える。
なぜ人間は許可もしていないのに、勝手に自分の領域の中に土足で踏み込んでくる?
なぜ人間は接点も何もない他人にそれほど興味を持つ?
なぜ、人間は不自由で生きにくいであろうに、他社と集団で行動し、生活をする?
そしてそれを――"何故人間は"と考えること自体が、アシュレイが人間ではないことを物語っていた。
最早自分は主人に捨てられた身。ならば、このままユーゼリアについて少しずつ人間として生きてゆくしかない。そう思っていた矢先に突きつけられた、"どうあったとしても「遣い魔」である"という事実。
人間になりきれないことには、この世界で生きて行くには厳しいだろうか――。
「それから、同伴していた彼女は、言ってみれば師弟関係だ。俺が弟子だな。俺の前の仕事は、ある方の道具となることだよ。……鑑定ありがとう。じゃあな」
言外に"これ以上聞くな"という牽制をかけ、出口へと向かう。ユーゼリアとは、討伐に出る際に落ち合い場所を決めていた。壁にかけてある時計を見やる。時間はちょうどいい。
僅かに軋む扉をあけて、時計台の下へと歩き出した。
******
アシュレイが去ったギルドにて。
「……サラ先輩」
「なに?」
「私、聞いちゃいけないこと、聞きました……?」
誰もいなくなったギルドの中で、手元に視線をおろしながら尋ねる可愛い後輩の頭を撫でると、明るい声でサラは言った。
「そんなことないわよ。良かったわね、長所だって褒められて」
「…そうですね! ていうかあの人かっこよくありませんでした!? あんまり見ない黒髪とか、『ある方の道具となることだ』…とか! 影があるイケメンとか、ちょ、どストライクなんですけど!!」
「前言撤回。あんたやっぱりしばらくしょんぼりしてなさい。うるさい」
「もうあの人行っちゃうのかなぁ。うちの実家の料理屋紹介したかったなぁ」
「うるさいっての」
こんな会話が繰り広げられていたことを、アシュレイは知らない。
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