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シャンヴリルの黒猫
19話「けもの」
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レイはなんだか哀れだった。

 数で押してきた巨大蜂全てを駆除すると、静かになる。目の前にこれほど大きな蜂の巣があるのにも関わらず、風に揺れる木々の音しかしないのは、妙に思えた。

「さて、と」

 枝に飛び乗り、巣の一部を剣で切り取った。瓶を取り出して、とろとろと溢れる黄金色のはちみつを入れる。少し考えてから、切り取った巣のかけらも中に入れた。

「ふむ。なかなか見栄えがするじゃないか」

 満足げに瓶を眺める。
 先程から巣の中からギチギチと音が聞こえるが、黙殺した。多分中では一生懸命女王蜂が卵を産んでいるのだろう。

(この手の魔物は2〜3時間で孵化するからな…撤退っと)

 また音もなく地面に飛び降りると、今度は走らずにゆっくりと歩き始める。その足は迷うことなく町の方を向いていた。
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