第二章 A's編
第四十四話 『シホの過去の話(中編)』
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する気なんて更々ないから」
「よかった…」
私が安心を得たのかシホは話を続けた。
「アーチャーは一度リンを攫って、私はアーチャーと決闘をする場所をアインツベルン城と指定した。
そしてアーチャーはリンを抱えてどこかへと消えて、残った私とイリヤ、セイバーはランサーと合流してアインツベルン城へと向かった。
そしてアインツベルン城で私とアーチャーは向かい合った。ランサーはリンを助けに行ってセイバーとイリヤは見届け人になった」
「で、でもあくまでアーチャーは英霊なんでしょ? シホがかなう訳…」
「いや、敵わない訳でもなかった。私とアーチャーの戦いは基本同じ戦い方…つまり剣製の競い合い。でも戦う前にアーチャーは語った」
アーチャーが語った内容。
それは…
「アーチャーは語った内容。
それは『ああ、確かにいくらかの人間を救ってきたさ。自分に出来る範囲で多くの理想を叶えてきたし、世界の危機とやらを救った事だってあったよ。英雄と。
遠い昔から憧れていた地位にさえ、ついにはたどり着いたこともある』…と。
だけどアーチャーがその果てに得たものは後悔だけで、残ったのは死、だけだった。
できるだけ多くの人間を救うために殺して、殺して、殺しつくした。
お前の理想を貫くために多くの人間を殺して、殺した人間の数千倍の人々を救った…。
誰も死なないようにと願ったまま、大勢のために一人を殺し、誰も悲しまないようにと口にして、その影では何人かの人間に絶望を抱かせる。
理想を守るために理想に反し、助けようとした人間だけを助け、敵対する物を皆殺しにする事で自分の理想を守った。
そして、アーチャーは言った。
『それがこの俺、英雄エミヤの正体だ。…そら。そんな男は今のうちに死んだ方が世のためだとは思わないか?』…と」
それで静かになる部屋。
誰も言葉を発する事が出来ず私も言葉を発する事が出来ない。
でもわずかに言葉を私は発する事が出来た。
「シホは、シホは違うよね? エミヤと違って…」
「いえ、私も同類よ。どんな綺麗な言葉で飾ろうともかつての理想を体現するために救えるものは救い切り落とすものはとことん切り落としてきた…確かに私は死んだほうがいいのかもしれない」
「そんな…」
「でも、それでも私はアーチャーとは違うと言い切れる。
アーチャーは切り捨ててきた人たちの分までもっと多くの人たちを救わなければならないという強迫観念にとらわれて、自分を犠牲にし続けただけです。
でも私は私は殺してしまった人の分まで想いを繋いでいこうと何度も挫けそうになる心を奮い立たせてきた…」
そう語るシホはさっきまでの自虐気味な表情ではなくなっていた。
それからまた何度もアーチャーの言葉がまるで自分の言葉のようにシホは語り続ける。
「私は
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