第二十五話 戦火の足音
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489年 6月12日 巡航艦バッカニーア ウィリバルト・ヨアヒム・フォン・メルカッツ
ローエングラム公との通信が終わったが巡航艦バッカニーアの艦橋は皆沈黙している。まあ無理もないだろう、話の大きさもさることながら黒姫の頭領の凄みをこれでもかと言うほど見せつけられたのだ。私自身、恐ろしさを感じざるを得ない。ただの海賊だとは思っていなかったがここまでとは思わなかった。いやむしろこれ程の人物が何故海賊なのかという思いがある。
「……親っさん、 金髪の奴、面白くなさそうでしたね。親っさんが自由裁量権をくれって言ったら露骨に胡散臭そうな顔をしてましたけど」
そう、確かに面白くなさそうだった。言われた内容の事もあるが、先を越されたという事、千隻の艦艇を動かしたという事も気に入らないらしい。もっと端的に言えば全てが面白くなさそうだった。胡散臭そうな目で見られていたが……。
「キア、ローエングラム公が面白くなさそうなのはいつもの事です。あまり気にする事は有りません」
平然としたものだ。シュナイダーと顔を見合わせ苦笑した。我々だけではない、他にも多くの人間が苦笑している。
「そりゃ、まあ、そうですけど……。親っさん、ルビンスキーの奴を捕まえられますかね?」
黒姫の頭領がチラっとキアを見た。微かに表情に笑みが有る。
「どうでしょう、私達が会いに行くのを待っているほど気の良い人間とは思えませんが……」
また、皆が苦笑した。
「黒姫の頭領、では何故フェザーンに行くのですかな? ローエングラム公はそのために頭領に自由裁量権を与えたと思うのですが」
私が問いかけると黒姫の頭領は微かに小首を傾げた。
「今回フェザーンに行くのはルビンスキーを捕えるのが主目的ではないんです。捕えられれば儲けもの、そんなところですね。他に色々とやらなければならない事があります、間に合えばいいんですが……」
間に合えば? 皆が不思議そうに黒姫の頭領を見ている。
「半月程遅かった……、でも半月前だと暗殺計画の確証が無かった……。あとは地球教とルビンスキーの関係がそれほど親密でないことに期待するしかありません。なかなか上手く行かない……」
黒姫の頭領が溜息を吐くと皆が不安そうな表情を見せた。はて、一体何が間に合わないと言うのだろう……。
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