第二十五話 戦火の足音
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ンプ、アイゼナッハ、ワーレン提督は家族がいる。そしてシュタインメッツ、ロイエンタール提督は交際している女性が居るはずだ』
「ロイエンタール提督……」
フェルナー長官が呟いた。よくそこまで調べている、そう思うよりもロイエンタール提督も? と思ったのだろう。皆も顔を見合わせ、そしてロイエンタール提督を見ている。ロイエンタール提督は迷惑そうな表情をしていたが黒姫は気にする事も無く言葉を続けた。
『ロイエンタール提督が季節ごとに女を替えている事は私も知っている、地球教も知っているだろう。だがそんな事はどうでもいいんだ。連中にとっては利用できる女が居るか居ないか、ロイエンタール提督にダメージを与えられる女が居るか居ないか、それが大事なんだ』
「……」
フェルナー長官が必ずしも納得していないと見たのだろう、黒姫が表情を厳しくした。
『また同じミスを犯す気か! 連中を甘く見るなと言ったはずだぞ、アントン・フェルナー!』
「いや、そう言うつもりじゃ……」
抗弁しようとしたフェルナー長官を黒姫が首を振って遮った。
『連中には軍事力が無い、彼らの武器は謀略とテロだ。甘く見ていると大勢の人間がテロで死ぬことになるんだ。その程度の事も分からないのか! 私をこれ以上失望させないで欲しいな!』
「分かった、直ぐ周囲を警戒させる」
慌てたようにフェルナー長官が答えた。烈しい口調だった、黒姫は苛立っている。我々の認識が甘いと見ているのだろう。
黒姫が眼を閉じ一つ息を吐いた。自分を落ち着かせようとしたのかもしれない。そんな黒姫を宥めるかのようにフェルナー長官が話題を変えた。
「教えてくれ、卿は何時フェザーンがおかしいと気付いた?」
黒姫がじっとフェルナー長官を見た、そして微かに口元に笑みを浮かべた。嘲笑……。
『生まれたときからだ、そう答えたら信じるか?』
「エーリッヒ……」
黒姫が声を上げて笑い出した。
『冗談だよ、アントン。気付いたのは士官候補生の時だ』
会議室にまた溜息が洩れた、これで何度目か……。ローエングラム公でさえ溜息を吐いている。我々とは余りにも違いすぎる……。
「卿にとっては俺など共に語るに足りぬ存在だろうな。手を組みたいと言っても断られるのは当然か……」
会議室にフェルナー長官の自嘲が響いた。彼だけの思いでは有るまい、この部屋に居る人間は多かれ少なかれ同じような思いを抱いているはずだ。まるで神と技を競うかのような感じがする、どれほど上手くやっても相手は常に軽々とそれを超えて行く……。残るのはまた及ばなかった、所詮は敵わないという徒労感と疲労感だけ……。
『……私と卿では望むものが違った。卿は軍人として出世する事を望んだだろう、だが私はそんな事は考えなかった。この帝国を変えたいと思った。願う物が違えば
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