第二十話 プールの妖怪その十一
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「奇麗よね、確かに」
「ええ、それであの神社に行ったのね」
『無事に生まれてくれる様に」
そう願ってのことだったというのだ。
「行ってたわ」
「それでお守り買ったのね」
「破魔矢も買ってね」
「無事に生まれてくればいいわね」
「そう思うわ。とにかくまだ生まれてないから」
聖花は自分を末っ子だと考えているというのだ、生まれて欲しいと思う気持ちは彼女も同じだが今ははっきりと言えないというのだ。
「まだね」
「そういうことね」
「そうなの」
「わかったわ。それにしても私はね」
愛実は聖花と共にプールサイドの周りを歩いている。靴は二人共入り口に揃えて置いて靴下も脱いでいる。プールサイドなので素足になっているのだ。
その素足で歩いて見回りながら言うのだ。
「お母さんなのね」
「悪い意味じゃないけれどね」
「高校一年でお母さんってね」
「嫌じゃないわよね」
「嫌じゃないけれど」
昼に周りに見せたのと同じ笑顔だった、その笑顔で聖花に話す。
「おばさんって思うからね」
「まあ高校一年でっていうのはね」
「別にママチャリ乗ったり手に輪ゴムしたりこめかみにサロンパス貼ったり虎柄のスパッツはいたりもしないのにね」
「それに道でコロッケや焼き芋買って食べたりね」
「そういうことしないのに」
二人共花も恥らう年頃なのは確かだ。
「雰囲気でなのね」
「愛実ちゃん面倒見いいし家庭科得意だから」
「おかんなのね」
「そう、それなのよ」
そして聖花は姉だというのだ。
「悪いことじゃないからね」
「わかってるけれどね。それにしても男子の視線もあるし」
彼等は皆愛実と聖花を『女の子』と見ていた。
「というか本当に皆見てたわね」
「上から下までずっとね」
「特に胸ね、私は」
「私は足で」
「夏になったら余計に視線を感じるのよね」
水着でなくともだ。夏服になり露出が増えてそうなっているのだ。
「全く、向こうも青春よね」
「いい意味でもおかしな意味でもね」
二人でこんなことを話していた、そしてだった。
二人であれこれ話しながらプールの中をじっと見ていた、だがそこには誰もいなかった。
聖花はこのことに拍子抜けしたものを感じてこう愛実に言った。
「ここにはいないみたいね」
「じゃあシャワールームかしら」
「そこかもね」
いるかも知れないと返す。
「行ってみる?それじゃあ」
「うん、そうしよう」
愛実もこう聖花に返す。
「そこにもいるっていうし」
「何が出るのかしらね」
「そういえば水だけれど」
愛実はここでふと気付いたことがあった、それは何かというと。
「お水っていったらね」
「あっ、日下部さんね」
「ええ、あの人海軍だったから」
「そうよね、お水よね」
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