第二十話 プールの妖怪その十
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「そっちなのよね」
「凄くけなされてる様な」
「けなしてないけれどね」
それは違うというのだ。
「それはね」
「違うのね」
「そう、違うのよ」
こう愛実に言う。
「そこはね」
「けれど何か大阪のおばちゃんって」
愛実にとってもその人達はお世辞にも上品な人達ではない、騒がしく猥雑だ。それでこう女の子に返したのだった。
「あまりいいイメージないから」
「大阪のおばちゃんだっていい面あるじゃない」
「逞しいというか図々しい?」
「だからしっかりしてるのよ、生活力があってね」
そういう意味だというのだ。
「愛実ちゃんはね」
「そういう意味なのね」
「そう、しっかりしてるから」
「だったらいいけれど」
「愛実ちゃん将来は食堂よね」
「多分ね。お姉ちゃん嫁ぎたいっていうし」
それなら家、即ち食堂はもう一人の子供である愛実が継ぐことになる、そういうことだった。
「それだとね」
「ほら、そうなるじゃない」
「まあね、私もそのつもりだし」
跡を継ぐつもりだというのだ。
「しっかりやっていかないとね」
「頑張ってね、今度カツ丼食べに行くから」
「鰺の塩焼き定食もあるからね」
「定食も定番よね」
食堂なら当然定食がある、これがない食堂も滅多にない。
「そっちにも力入れてるのね」
「そうよ、安くて量も多いから」
「勿論味もよね」
「お袋の味だから」
こんなことをプールで話していた、、昼はこうした話をした愛実と聖花だった。体育の授業も程なく終わった。
そしてその日の夜も二人はプールサイドにいた。だが今は水着ではなく夏の制服だ、白いブラウスと青と緑、それに白と黒のタートンチェックの短くしたプリーツスカートでそこにいる。
愛実はそこで暗がりのプールの水面を見ながら愛実に言った。
「私っておばさん臭いのね」
「私も言われたけれどね」
「けれど聖花ちゃんはお姉ちゃんじゃない」
「末っ子だけれどね」
「いや、今おばさん妊娠してるんじゃないの?」
愛実は既にこのことを聖花本人から聞いていて知っている、だからここで聖花に対してこのことを言ったのである。
「三ヶ月よね」
「ええ、そうだけど」
「じゃあ末っ子じゃないじゃない、もう」
「生まれてくれるかどうかわからないからね」
聖花は確かには言わなかった。
「だからね」
「そういうことはあまり言わない方がいいわよ」
「けれど実際のことだから」
流産や死産の危険はどうしても付きまとう、それで聖花もこう言うのだ。
「怖いからね」
「それはそうだけれどね」
「ましてお母さんも高齢出産だし」
聖花が今回特に不安に思う理由はこのことだった。
「だから余計にね」
「心配なのね」
「無事に生まれてくれたらいいけれど」
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