第5話『その男は』
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郎。
随分と口が悪くなった。自分のことを冷静に分析しながらハントは意識を手放したのだった。
「――ああああああ」
まだ少年のものとは思えないほどに悲壮感あふれた悲鳴が響く。その悲鳴にはもう力がなく、世紀末すら感じさせるようなソレに、だがそれを取り巻くのは軽薄でいて実に楽しそうな笑い声だった。
「次、俺の番ら!」
そういって男がナイフを投げる。呂律もまわらないほどに酒に酔っている男のナイフが真っ直ぐに飛ぶわけもなく、回転しながら弧を描き、刃ではなくナイフの柄が少年の太ももにあたった。
大して痛くないであろうと推測されるその威力だが、ほとんどが赤く染まっているボロ布がまた赤くそまった。少年が苦悶の表情をうかべ、どうにか声を押し殺した。
「ぎゃははは、0てーーーーんっれか!!」
ナイフを投げた男は大して悔しくもなさそうに笑い声を上げる。
その光景はまさに異常の一言に尽きる。
明かりがほとんどない夜の世界の中、船の甲板で楽しそうに騒ぐ彼ら。それ自体は別に異常なことではない。魚人島に着き、調べることは全て調べ、下準備は完璧。あとは時間を見計らうだけの段階。
既に夜なってしまっており、こう暗くては何もできないと話し合った結果、前夜祭と称してタイミングを見計らいつつも宴会を繰り広げることにしたのだから宴会をやっていること自体は普通のことだろう。
だが、その宴会の光景が異常。
彼らが酒を呑みつつ、酒の肴にしているのはぼろぼろの少年、ハントだ。
頭や顔には鉄の仮面をかぶせられ、人体の急所と呼ばれるところにもなんらかの鉄の防具をあてられて、それ以外にはボロ布一枚を着せられているだけのハントは、四肢を拘束され、今や投げナイフの的となっていた。
どうせ日が昇るまで時間がある、それならばそれまでこうやって拷問と宴会を楽しもうと言い出したのは副船長だ。
釣りをするには死なない程度に重傷であればあるほどいい。最初は皆その程度の認識だったのだが、副船長が血がたくさん出ていればいるほど釣りのときに2匹以上を一度で釣ることだって可能だと提唱して、今に至っている。
少年の周りでは船医が少年の体を何度も触診したり、顔色をはかったり、傷口の具合を確認している。ぱっと見れば実に献身的にみえる行為だが、船医のやっていることはどれだけ死に近づけたまま生でいさせるかだけであり、少年の悲鳴が響くたびに喜悦の表情を浮かべているあたり、その性格が見て取れる。
一体どれほどの時間、こうやってナイフ投げをしているのだろうか、ハントの足元に出来ている小さな血だまりが、ハントの無数の傷と、それら一つ一つの傷口からの出血量の少なさがその時間の長さを想像させる。
狂宴はまだ終わらない。
「じゃ
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