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ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
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〜絶望と悲哀の小夜曲〜
休暇
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晴天と気温が高い。

汗があごをツーっと垂れていく。

あれから時計の長針がくるりと綺麗に一回転したくらいの時間が過ぎただろうか。

その間、どう言う理屈かは解からないが、真っ白な雲の上に浮いているウキは、ぴくりともしない。

それどころか、うららかな日差しとのんびりとした空気も相まって、徐々に眠気が襲ってくる。

レンは大きなあくびを一つして、ためしに竿を引き上げてみた。

当然ながら、糸の先端には銀色の針が空しく光るのみだ。付いていたはずの餌も、欠片も残っていない。

この釣りスポットで釣れる魚は、かなり多い。

相当難易度が高い魚もいるが、スキル熟練度三〇そこそこで釣れる恐ろしく簡単な魚もいる。

ちなみに大昔とはいえ、一時期上げていたレンの釣りスキルは三〇〇近い。

大物ほど高望みはしないが、何かが掛かってもいいと思う。

「………………………あ〜あ」

小さくレンはため息をつくと竿を傍らに投げ出し、これにかこつけて日向ぼっこでもしようかと思った。

水面ならぬ雲面は、当然ながら真っ白で何も見えない。が、反射する日光は心地よく眠るのにぴったりだ。

ごろんと横になったとき、レンの耳が何かを捉えた。

それは紛れも無く――

浮いていたウキが沈む音。

「来たァァーッ!」

がばりとレンは起き上がり、ぴくぴく動いている竿を勢いよく握りなおす。

浮きが沈んでいる深さから言っても、かなりの大物だ。

――こりゃあ、今晩はご馳走だな。

そんなことを思いながら、早くもどんな料理にしようかと考え始めたレンは、大変重要なことを忘れていた。

それは、こんな深さまで浮きを沈める大物が一瞬でも喰いついたならば、放って置いた竿など一瞬でなくなってしまうことに。

「ぬううッ!……重いいィーッ!」

かなりの大物が釣れたのか、竿はびっくりするくらいに重かった。

全力でレンが力を込めて踏ん張っても、ぴくりとも動かないくらいに。

これ釣れるのかなぁ、などという情けない思考が鎌首をもたげ始めた時、やっと釣り糸は不穏な軋みを響かせながら、ゆっくりと上昇を開始した。

そしてその格闘が開始してから、数分後。

「ファイトー、いっぱァーっつ!!」

なぜだかお約束のような気がして叫んだレンの掛け声と、ざっぱあぁァァー……、という音とともに水面から浮かび上がったのは――

真っ白な髪を持つ、純白の少女だった。
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