暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
SAO
〜絶望と悲哀の小夜曲〜
休暇
[2/3]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


どんどん深まっていく秋の風と日の光が、そよりとだだっ広い部屋の中に入ってくる。

それに髪を軽くなびかせながら

「んー、今日もいい天気」

レンは言った。

右手を振ってメインメニューウインドウを呼び出し、装備欄に指を走らせる。

イヨから売られた、というか半ば押し付けられた形の黒猫パジャマから、簡素な木綿シャツに着替え、朝食をレンは作り始めた。









目玉焼きと、バターたっぷり塗ったパンというそこそこな朝食を終え、二秒でテーブルを片付ける。

そしてレンは深くイスに寄りかかる。

「ん〜、今日は何しよっかなー」

あの狂気の日から早六ヶ月、安静と安寧を求めてここに居付いたのはいいが、正直言って飽きないといえば嘘だった。

もともと娯楽の少ないSAOのことだ。

できる暇つぶしと言えば、かなり限られてくる。ポピュラーなのは散歩か木登りかクエストだ。

が、そのどれもがもう飽きてしまった。

散歩(第一層をどれだけ速く往復できるか試みた、ソニックブームが起きた)も、木登り(何が面白かったのか今では解からないが、層の地面と次層の底まで飛んで落ちるのを繰り返していた)も、クエスト(情報屋のクエスト名鑑の九割がたを制覇した)も、全部。

「ん〜」

レンは唸りながら、同じくアイテムストレージから取り出した煙管を吸い込む。

現実世界ならば、PTAが警察のおまけを引き連れてすっ飛んできそうな光景だが、幸いこの世界ならばそれを咎める者など居ない。

味だっていいし。

鮮やかな輪っか状の煙を立て続けに発射し、レンは何気なく部屋を見渡す。

意外にも整理整頓された部屋のあちこちには、衝動買いと明らかに分かる安っぽいお土産じみた物が転がっていた。

その中にレンはあるものを見つける。

「ああ〜!これがあったかー」

そう言ったレンが手にしたそれは、結構立派な釣竿だった。

これは、ずいぶん前に買って忘れ去られていた物だった。

《釣り》スキルも取ろうかと思ったのだが、基本的に釣りスキルは筋力値を優先し、敏捷値はあまり重視されないことから放っておいたのだ。

そういえば、ここの所魚を食べていないことも思い出す。

たまにはNPCの店で売っている種類以外の《雲海魚》も食べてみたい。

餌は………途中で買ったらいいだろう。

「よ〜しぃ、んじゃ行こっかな!」

レンは少しだけ重い釣竿を肩に乗せ、手近な釣りスポットに向けて歩き始めた。










一時間後。

「ぜんぜんまったく何にも釣れない…………」

天気は一片の曇りも無いピーカン。秋も深まってきたとはいえ、ここ第三十九層の気候は基本
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ