暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアート・オンライン 〜無刀の冒険者〜
SAO編
episode1 一極化型の憂鬱3
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ドでの突進に倒れこんだゴブリンが耳障りな悲鳴を上げる。

 (うっし!)

 案の定倒すには至らなかったがピヨらせる程度の効果はあったらしく、体勢を崩してゴブリンが一旦停止する。本来ならここでラッシュへとつないでトドメを刺すのが常識だろうが、今は追われる身。経験値はおしいが、な…っと、そんなこと言ってる場合じゃない!

 後ろを振り返れば、そこにはこちらに向かって奇声を上げて走ってくるゴブリンの群れ。おおー、すげー。十はきかないな、二十近くいるんじゃないか、あれ。先頭を比較的足の速い「剣持ち」が走り、時折その背後からナイフが飛ぶ。

 『トレイン』と呼ばれる非マナー行為のお手本のような振る舞いだが、こんな状況ではそんなこと言ってられないし、そもそも俺に過失はないだろう。ない、だろう?

 とにかく、全部相手をしていてはとても身が持たない。そもそも俺がここに来たのはクエストの一環であって、レベル上げでは無いのだ。無理して相手をする必要は、全く無い。一応ダンジョンである以上、迷宮区ほどの大物ではないにせよボスがいてもおかしくないのだ。

 (……よし、このまま逃げきろう)

 全力で逃走を決め込んで、俺が周囲の石壁に目を向ける。むやみに取りまくった探索関係スキルのどれかが発動して、それらの内、仕掛けのある壁が分かり、カーソルが浮かぶ。そのうち一つを選んで、とりあえず全力で押す。
 こういった場所の仕掛けなら、大概は。

 (うっし、ビンゴ!)

 予想通り、仕掛けは回転扉。

 壁に細い線が走り、ゆっくりと…って重い!? オイオイ、ここも筋力補正いるのかよ!? はやく、はやく、はやく! ゴブリン達の奇声が、どんどん近づいてくる。扉が、ぎし、と音を立ててホコリを落とし、やっと回転し始める。

 (間に合うか…っ!?)

 背中にナイフの数本頂戴するのは仕方ないと諦め、石壁が開いたらぎりぎりで滑り込もうとし、

 「へ?」
 「え?」

 ちょうどその扉を挟んだ向こう側から声がして。

 その人物が、ぽかん、と口を開けて、俺を見、俺の後ろを見。

 「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!?」

 ゴブリンの大群に、悲鳴を上げた。



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