Episode8:九十九家のお仕事
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て来い」
「はい」
リーダーと思しき男がいるのは最上階である5階。この部屋には、この男と側近である中年くらいの男と、あとは女しかいなかった。リーダーのほうはまだ若い。恐らく、20代後半くらいだろうか。だが、男が纏う雰囲気は、人を使うという、リーダーという存在特有のものだった。
リーダーが下の階が騒がしいことに気づいたのはついさっきだ。ぶっちゃけ、このビルはいつも騒がしい。まあ、遊び呆けているのだから当然だろう。今日もどうせいつも通りなのだろう、と男も最初は考えた。だが、同時に今回は違うというような気もしていた。だからこそ、リーダーは一番信頼のおける側近に下の階を見て来いと頼んだのだ。
側近が階段をおりていく内にも叫びは聞こえるまま。男は何故か沸きあがる不安を押し流すように、一息にグラス内のワインを飲み干した。そして、側近の男が降りていってから数分、けたたましい叫びや悲鳴はピタリと止んだ。それを、男は自分の側近が諫めたのだと理解した。しかし、事態は男の予想を裏切っていた。いくら待てど、側近が戻ってくる様子はない。それに、やけに静かすぎた。側近が騒ぎを止めたから、そんな甘い考えをするほど、男も初心者ではない。下の階からは、叫びや悲鳴、声、いや、生きている者の声や存在すら感じられなかった。
そこで、男の『不安』は一気に『絶望』へと落ちた。男の横に立っていた二人の女が、音も無く、光もなく、ただただ空間に歪みを生んで消え去ったのだ。
『動くな』
錯乱しそうになった男を静めたのは、冷酷で非情な声だった。凡そ生者の人間が発すると思えない、地獄の門番のような冷たさを持つ声。
『お前が、ここのリーダーか?』
姿を見せず、気配を掴まさず、また、声すらも変えて、『暗殺者』九十九隼人はリーダーと思しき男に問いかけた。隼人が発する無音の圧力に屈した男は、ゆっくりと、顔に脂汗を滲ませながら頷いた。
『そうか。では一つ聞く。お前達の目的はなんだ?政府か?魔法大学か?それとも、魔法科高校か?』
最後の言葉に男が身じろぎするのを、隼人は見逃さなかった。そう、ブランシュ日本支部が狙っているのは、魔法科高校。その生徒か先生か、機密データかは知らないが、恐らく狙われるのは第一高校だろう。
『ならば手を引け。お前の部下は皆、この世から消え去った』
非情な宣告が、男を貫いた。
「殺したのか?」
その問い掛けは、好奇心ではなく、恐怖が生み出したもの。自分の死を先送りするための時間稼ぎ。
『殺したのではない。消し去ったのだ。さあ答えろ。返答次第ではお前を逃がしてやることも考える』
それは、まるで悪魔の囁き。死を目前
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