第十二章
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ばれ
褒められもせず
苦にもされず
そういうものに
わたしは
………
…そしてご主人さまは。 ひっそりと。 動かなく、なった。
死んだ。死んじゃった。ご主人さま。たった一人の。
――あれ?ご主人さまはさっき、柚木を抱きしめて……
ううん。死んだ。死んじゃったのよ。もう、会えないの。
――そんな。さっき笑いながら、ご主人さまが生まれた南の土地の話をしてた。それで、それで柚木に、抱きしめられて。
柚木?柚木って、なに?
――…あれ?柚木って、何だっけ…?ご主人さまを、抱きしめたもの。
ご主人さまは、ずっと1人だったわ。そんな子が居るはずない。柚木は多分、ウイルスのこと。…だって思い出して。憎いでしょ、殺したいでしょ、ご主人さまから、引き離したいでしょ。
――引き離したい…?うん、引き離したい。一緒にいてほしくない。
そう、だからウイルス。…でももう遅いのよ。ご主人さまは死んだから。ビアンキの手も、足も、ないのと一緒。助けられなかったんだもん。
――ご主人さまに届かない手足。…ないのと、一緒。
だから、墓標を作りましょう。大好きだった、ご主人さまのために。密かに想ってた、あの人の綺麗な瞳を、たくさん、たくさん、たくさん集めて、花束みたいに飾りましょう。ほら、凄く綺麗だよ。…全部、飾り終わったら、あの『最後の』紅い扉を開けましょう。私とご主人さまの、最終章。
…紫色の扉の向こうに、紅い扉。
飛び散った血みたいに、紅い扉。
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