第十二章
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もう…やめ…て…』
白くて綺麗だったご主人さまの肌が、土気色に変色していた。透析、してないんだ。ご主人さまが、死んじゃう…!私のことはもういいから、もう、逃げて、くださ……い……。
ある日、突然オンラインに放たれた。あの男に言い含められた。…私くらい、徹底的にウイルスに冒されたMOGMOGは『仲間はずれ』にされるから、ワクチンの交換が出来ない。ただ、私と同じ仲間のMOGMOGを見つけたら、ご主人さまを解放してくれるって、そう言った。
―――絶望と、苦悶の日々だった。
私は逃げる皆に追いすがって、私と同じMOGMOGを探した。そして時間になれば監獄に戻り、沢山のウイルスに冒された。そしてまた探した。また冒された。探した。冒された。……ずっと繰り返した。地獄だった。いつか、綺麗だったドレスはウイルスの侵食でぼろぼろになり、ご主人さまに届かない手も、足も、私の思考の外に消えていった。手も足も持たない、ウイルスまみれの私は『化け物』と呼ばれる存在に成り下がった。
一回だけ、私と同じMOGMOGを見つけた。でもあの子は私の姿を見るなり、硬い障壁を張って閉じこもってしまった。助けて、助けて、助けて…何度も叫んだ。障壁に溶かされながら、何度も、何度も。ご主人さまを、助けて!!…彼女の姿が掻き消え、私はまた一人、取り残された。…googleの監視が来る前に、ここを去らないと…私、化け物だから…。
いつかご主人さまが解放されて『透析』を受けられれば、あの幸せだった日々がきっと戻ってくる。それだけが、一縷の望み…だった。
その望みすら絶たれる日が来るまでに、大して時間はかからなかった。
「もう、私を譲り渡してください…ご主人さまが、死んでしまいます…」
『…ごめんね。辛い思いをさせて。でも紺野は…僕の』
病み果てて、土気色になった唇を震わせて、ご主人さまは小さく微笑んだ。
『唯一の、友達なんだ。裏切るわけにはいかない…人生の締めくくりがそれじゃ、僕が生きてきた価値はないから』
とても強い、目をしてた。
わかりました。ご主人さま。…私に何かを命じられるのは、この瞳だけ。だからしっかり焼き付けます。…死んでも忘れない。…ずっと、忘れない。ご主人さまの死を見届けて、私もひっそり、寄り添うように眠りにつくんです。ずっと……。
そう、伝えると、ご主人さまはゆっくり微笑んで、一語ずつ、歌ってきかせるように、つぶやいた。
雨にも負けず
風にも負けず
雪にも夏の暑さにも負けぬ
丈夫なからだをもち
慾はなく
決して怒らず
いつも静かに笑っている
よく見聞きし分かり
そして忘れず
………
東に病気の子供あれば
行って看病してやり
南に死にそうな人あれば
行ってこわがらなくてもいいといい
………
みんなにでくのぼうと呼
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