二人の道が交わった日
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人になっちゃってるじゃん」
「笑わないって言ったのに……。それに、そんなことは自分が一番わかってるよ」
僕は力なくそう返すのが精一杯だった。
「そっか。そうだよね」
「はあ。やっぱり話さなければよかった」
「ごめんなさい。私が悪かったわ」
「もういいよ。こうなることは予想してたし……」
口ではそう言いつつも、再びため息を溢してしまう。これじゃあ駄目だと思い、僕は頭を振って気を取り直した。
「よし、じゃあ次だ。郵便局に飛び込んできた理由だったよね。こっちは単純に、銃声が聞こえたからだよ」
「……意味がわからないわ」
訝しげに僕のことを見てきた朝田さんに、笑顔で話した。
「さっきも言ったけど、助けられそうな人を助けるのは、当たり前じゃないかな?」
「そんなことができるのは、一部の人だけだよ。それに……怖くなかったの?」
「銃が? そうだね。怖かったか怖くなかったかでいったら、怖かったよ」
「じゃあ……」
「でも」
更に問い質そうとして出した言葉を遮って、僕は毅然とした口調で続けた。
「自分に助けられる力があるのに見過ごして、誰かが傷つく方がよっぽど怖かったよ。……なんて、ちょっと格好つけすぎたかな?」
そんな心配をした僕に、朝田さんは飛び切りの笑顔を向けてくれた。
「大丈夫だよ。十分格好よかったから」
その笑顔があまりにも綺麗だったから、どぎまぎしてしまう。
凄く気恥ずかしい。
僕は赤面を隠すように俯いて、口を開いた。
「そっか。それならよかった。じゃあそろそろ教室に戻ろうか」
「……? ええ、そうね」
朝田さんは一瞬だけ首を傾げたが、あまり気に留めないで流してくれたようだ。
これが、二人で交わした初めてのまともな会話だった。
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