二人の道が交わった日
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だよね。……そうだ、お礼、まだしてなかったよね? あの時は助けてくれてありがとう」
朝田さんは俯いていた顔を上げて、少し笑ってくれた。
「困っている人がいれば、助けるのは当たり前だと思うんだけど……まあ、どういたしまして」
「普通はそう簡単に人助けなんてできないと思うけど……。まあ、いいわ。それじゃあ今度こそ聞かせてもらうわ」
そう真剣な顔で聞いてきた。
「うん。朝田さんは何が聞きたいの?」
「あの時の、一瞬で私と男の間に入った動きと、郵便局に飛び込んだ理由。それが聞きたいこと」
そう言って、真っ直ぐに力のこもった目で僕を見つめてきた。
僕はその目を見て、はぐらかさないで答えることを決めた。
「わかった。それじゃあ先に、朝田さんと犯人の間に和って入った時のことから説明するよ」
僕はどうやって説明しようか、と考えを巡らせた。
「そうだね……。あの時の動きを説明するためには、僕が道場に通ってることから話した方がいいかな」
「道場?」
「そう。これでも結構強いんだよね」
すると朝田さんは、疑いの眼差しを向けてきた。
「やっぱり、信じられないか……。まあいいや。取り敢えずそこで練習をしてるんだけど、段違いに強い人が何人かいるんだよね。その人たちに勝ちたくて、何度も試行錯誤して生み出した技術なんだよ。縮地って聞いたことないかな?」
「聞いたことはあるけど……信じられないわ」
「ならもう一度見てみる?」
そう提案すると、朝田さんは驚きの表情を浮かべた。
「いいの? そういうのって、普通はあまり見せちゃいけないものだって思ってたんだけど」
「まあ、我流の技だから大丈夫だよ。じゃあ、いくよ」
そうタイミングを告げて縮地を使い、瞬く間に三メートルほど移動した。
そして朝田さんの方に振り向くと、不満そうに頬を膨らましていた。
「全然見えなかった」
「そんな簡単に見切られたら、意味がないからね」
「うーん……それもそうか。羽月君って本当に強いんだね。でも、なんで普段学校の体育とかで本気を出さないの? やっぱり、本気を出すのはダメなの?」
答えにくい質問だったから、僕は確認を取ることにした。
「そういう訳じゃないんだけどね……。その、言っても笑わない?」
「うん。笑わないから言ってみてよ」
「わかった。信じるからね」
そのあと一度深呼吸をしてから、口を開いた。
「僕が本気を出さない理由は……目立ちたくなかったから、なんだよ」
「目立ちたくなかった? 本当に?」
「うん」
僕が頷くと、辺りを沈黙が支配した。
静まり返った時間は、僕の体感ではとても長く続いた。だからなんともいえない気持ちになって、少しだけ目を逸らすと、朝田さんが吹き出して笑った。
「ふふっ、変なの。結局今回の事件で一躍有名
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