二人の道が交わった日
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事件に巻き込まれたって聞いて、凄く心配したよ」
「正確には自分から巻き込まれにいった、だけどね」
「でも本当に無事でよかったです。だけど、何人かの人を助けたんですってね。よく頑張りましたね」
「心配はしたけど、人を助けたって聞いて、僕は嬉しかったよ」
心配を掛けてしまったことは心苦しいけど、誉めてもらえたことは嬉しかった。
「うん。誰も死ななくて、本当によかったよ」
僕は安堵のため息を溢した。
「そうですね。人を助けるなんて、普通ならできないですし、ましてや全く知らない人ならなおさらですよね」
「でも、これからが大変そうだなあ……」
そんな僕の弱々しい呟きを聞いて、父さんは笑った。
「そうだね。小さな田舎町で起こった拳銃強盗事件、それを解決したのはたった十歳の少年! って感じかな?」
それを聞いて、母さんもくすりと笑った。
「そんな見出しの新聞がありそうですね」
「笑い事じゃないのに……。はあっ、学校に行きたくないなあ」
「いいじゃないか、別に。苛められる訳でもないんだし。まあ逆に、人気者になりそうだけどね」
僕の頭を撫でてくれた父さんに、不満そうな顔を返した。
「僕は注目されるのが嫌だったから、学校では静かに過ごしてたのに……」
「これも勉強だと思えばいいんですよ。まあ、頑張ってくださいね」
「そんな勉強なんてしたくないよ」
ああ、憂鬱だ。
***
事件から一週間が経過し、月曜日になった。
僕は毎日沢山の人に追い掛けられるのに慣れてしまったり、思考がすっかり投げ遣りになってしまったりして、物悲しい気分だ。
しかし僕があまり答えないでいると、だんだんと質問される回数が少なくなっていった。しかも今朝は数人からしか質問されなかったので、来週には事件前と殆ど変わらない生活を送れるのではないかと予想している。
また、朝田さんも現場にいたということで、僕と同様に沢山の質問をされていた。だから少々疲労の色を見せている。
そんなことを考えながら給食を食べ終えると、昼休みになった。
すると朝田さんが声を掛けてきた。
「ちょっといい? 羽月君。話したいことがあるんだけど」
「朝田さん。いいけど、移動する?」
僕は辺りを見回して言った。
「ええ。そうね。付いてきて」
「うん」
それからは無言で、殆ど人が来ないところに移動した。
「ここでいいわ。じゃあ、聞きたいことがあるんだけど」
「いいよ。でもその前に、朝田さんは大丈夫だった? あと朝田さんのお母さんも」
そう訊ねると、朝田さんは少し俯いてしまった。
「えっ、あ……うん。私は大丈夫。お母さんは……」
「ごめん。聞かない方がよかったね」
「ううん。別にいいよ。心配してくれてるん
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