覚めない思い
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武蔵が派手なドリフトをかけている中、輸送艦の連中は左舷後部に避難しているのだが、俺達の勢いは止まらない。
「おいおい、どうしたもんかなぁ……おい、正純。どうなると思うよ?」
聞いてみたが、返事が返ってこない事にどうしたと思えば、正純は艦にへばりついて身動きできない感じになっている。
「……正純。もう少し、ちゃんとしろよ。仮にも俺と同じ権限だろうが」
「……あ、あ!? 私はお前みたいに、こんな横Gやら、何やらが凄い中で仁王立ちできるお前ほど! 人間止めてないんだよ!」
最近、このヅカは中々言うようになってきやがったな、とある意味感心するが、ここまで簡単に武蔵に染め上げられる正純を見ると少し、将来が心配になってくるが、気にしても仕方がない。
もう、手遅れだし。
「おい、ネイト。言ってやれ。俺達は戦闘が仕事だが、人間を止めることは仕事じゃねぇって事を……」
逆側に立っていたネイトは銀鎖で必死に自分を支えようと縛っていたので、こりゃあ同じかね、とどうでもよくなってきた。馬鹿は転がっているし。
バランスには多少、自信があるが喜美や最近で言うなら宗茂程じゃないから、別に自慢にもなりゃしねぇ。
現に、多少、剣を地面に刺して支えているくらいだし。
「と言っても……ちょっと回頭する距離が足りてねぇ気がするが……」
そうは言っても、さっきから緩衝制御込みでも武蔵全体がギシギシいっている状態である。
速度を落とせば、艦の傾きで英国に激突する。
かと言って、俺たちが何か出来るかっていえば、当然出来ることはほとんどない。機関部のおっさん達や、"武蔵"さん達に任せるしか手段がない。
こういった事は、匠の出番だろうと、慣れてきたドリフトのバランスを取りながら思い
「……あん?」
強烈な、何か、違和感みたいな感じを得た。
何故か知らないが、西の空を見てしまう。そこには別に何もない。こんなドリフト中だから、空は一気に過ぎていくが、故におかしなところはないはず。
「……?」
感じが悪い。
何故か、そっちにばっかり意識が向いてしまう。迫っている英国すら気にしなくなってしまう。
だから、逆に自分がそっちに意識を向ける理由はなんだと自分に問う。そこまで、思い───一気に背筋が震えた。
警告を発しようと考えるが、頭の計算では絶対に間に合わないと出てしまい、ちっ、と大きく舌打ちをする結果になる。
第四階層の西岸の白い砂浜の上に立っている緑色のフード付き長衣を着、足には鉄杭の鎖がついた足枷を嵌めている、有体に言えばおかしな恰好をした者。"傷有り"が、不可思議……というよりは違和感を感じる音を聞き、改めて急接近しつつある武蔵の方を見る。
接近速度と距離を計算すれば、
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