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王道を走れば:幻想にて
第四章、その7の1:いろんな準備
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貴女はクウィスの名を戴く方でいらっしゃいます。実を申しますと、私の村の者達も恐縮ではありますが、貴女に関心を寄せられているのですよ」
「それは、初耳です」
「・・・今より二十と少しばかり年を遡りますが、戦乱より帰った私の祖父が帰っていの一番に、村の皆々に申し上げたのです。『クウィスという騎士に救われた』と」
「・・・そうですか。父が、そのような事を」
「ええ。祖父は村の村長でもあり、賢人でもありました。ですからあの人の言葉は直ぐに村に伝わり、皆もあの人と同じように貴女を慕っております。どうかアリッサ様におかれましては御父君と同じくらい、いやそれ以上の騎士であるやもと、皆が期待しているのです。彼らは恥ずがり屋で中々話し掛けようとはしませんが、心の端っこではそのように考えている事でしょう。ですから調停官様、何卒どうぞ宜しく御願い致します」
「・・・畏まりました。謹んで御助力を賜りまして、村の方々や、エルフの名誉を尊重すべく、努力致します」

 座上であるが思わず、深々と頭を垂れて礼をするアリッサ。瞬間、ずきりと腰が痛むのを感じて手をやってしまう。それを見てソ=ギィが微苦笑を浮かべた。

「まだ、腰が痛むようですね」
「え、ええ・・・。どこぞの誰かの馬に、乱暴されたもので」
「あらあらまぁまぁ。乱暴なお馬さんですのね」

 実を言うと、この会談は村に到着して三日目の昼前に行われているものである。本来なら二日目にやりたかったのであるが、アリッサ曰く腰痛でとても会談に集中できないという事で、急遽一日ずらす格好となっているのだ。その真の原因であろう慧卓は目をちらほらと泳がせて、心成しか肩身を狭苦しそうにしていた。
 ちらりと悟られぬ程度に彼を見やってから、ソ=ギィは切り出した。

「ところで、つかぬ事をお伺いします。一昨日の晩ではありますが、私の娘が奇妙な音と声を聞いたので御座います」
「き、奇妙な?」
「はい。何やらぎしぎしと、何かが歪むような音が断続的に・・・。それに加えて亡霊のような上擦った声がしたとの事で。とても奇妙でしょう?」
「え、ええ!!本当に奇妙ですねっ!一体何なのでしょう!?本当に亡霊でもいるのでしょうか!?ハハハっ・・・」

 あからさまに動揺をするアリッサを見て慧卓は顔を強張らせる。自らの犯した罪が露見するかという思いが、ひやひやとして胸中を穏やかならざるものとさせていく。アリッサが一向に視線を合わせようとしないのが、慧卓のいやな予感の存在感を増していた。

「・・・更に言うとですね。とある一室のベッドに敷いてあったシーツなのですが、昨日洗濯のために回収したところ、酷く濡れた状態であったと侍女が申すのです。とても寝汗だけでここまでは酷くならないだろうというくらいまでのものなのですが」
「へ、へぇ・・・
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