暁 〜小説投稿サイト〜
王道を走れば:幻想にて
第四章、その7の1:いろんな準備
[9/15]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
。充分ではないと感じれば、書物の追加提供を依頼すればいいですし」
「依頼については俺に任せろ。申し入れに行ってくるから」
「是非、お願いします。こういってはなんですけど・・・私が行っても聞き入れてもらえないでしょうから」
「だろうな。そのような優しそうな顔をしていれば、相手は足元を見てくるだろう。だから、俺の出番というわけだ」
「そうですね、この中では一番粗野な顔付きですもんね」
「・・・パウリナ、お前なぁ・・・」

 あっけらかんとして素知らぬ表情をした彼女に、ユミル以外の皆が微笑を湛えた。調停団における自らの立ち居地にユミルは疑問符を浮かべ、納得がいかぬように頸を捻った。 


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 大雨が過ぎて湿っぽくなった大地は、二日における日照りを受けて大分乾きつつある。エルフ自治領の東部にはなだらかな平野が広がっており、川や林を境にして村々がそれぞれの作物を栽培しているようであった。慧卓がガラス窓越しに見る村では、賢人が住まう村とあってか他地域よりも幾分か裕福な層が居住しており、雰囲気も和やかで、生活に困窮している様子は無い。人の姿形が見えなくとも、その雰囲気は理解できる。争い深き時勢にあるに関わらず平穏無事であるのだ。
 この恵まれた環境は、矢張り賢人たるソ=ギィ、そしてその娘であり私兵団の団長であるチャイ=ギィの活躍があってこそのものであろう。同室にて穏やかに茶を飲む姿は母子揃って優雅であるが、その仕事ぶりは素晴らしいものがあるに違いない。

「では、御協力の方を御願いしても?」
「ええ。構いませんわ。老人方のお遊びに付き合うよりも、余程健全ですもの」

 鷹揚とした頷きを受けて、アリッサは笑みを湛えた。彼女の目的通り、また新たに一人の賢人から協力を得る事が出来たのだ。シィ=ジェスに続いて二人目の協力者であり、その安堵は一段と大きなものとなっていた。
 賢人会議においては賢人ら八人に加え、王国の調停官が一票を投じる事となっており、投票総数は九票である。現状分かっている範囲では、ニ=ベリとキ=ジェの二票とイル=フードの一票が対立しあい、王国側の三票は状況によって投票先を変えるであろう。余った三票は未だどの派閥に属するかは不明なため言及は出来ない。が、全体の三分の一を水面下では支配出来たという事実は王国にとって莫大な利益となるに違いない。アリッサもそれを理解しているようで、笑みに浮かんだ安堵は大きなものであった。

「しかし、御二人ともまだ御若いのに御立派に職務に就いていらっしゃるようで、私、とても感心致しました。王都の騎士様がこのように御活躍されていると聞けば、王国の民草の皆様も誇りに思う事でしょうね」
「ええ、そうあって欲しいと願っております」
「そうでしょうとも。特に、
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ