第四章、その7の1:いろんな準備
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は無かった』と、言ったのだな?
「ええ」
「なるほど。そもそも奴らは此処へは長居をする予定が無かった。この森に居たのは、唯単に金を支払うだけ。最初から立ち去る心算だったから、遠慮無く言えたと」
「・・・それも考えられますね。だとしたら、彼らの本当の目的はなんでしょう?」
「さぁな。少なくともこの森に執着が無いというなら、必然的に目的も無いだろう。となると、奴らがイルにさせている魔獣狩りにこそ、目的の真意があるのではないか」
「・・・そう、ですね。それが答えなのでしょう」
指摘が尤もであるがゆえに、キーラは言葉と共に一つ首肯する。彼女の傍らでリコが小さく唸りながら、ぽつりと疑問を零す。
「・・・・・・魔獣狩りって、どこでやってたっけ?」
「白の峰よ、リコ。西にある大きな山」
「ああ、あそこか・・・。昔龍が居た場所でしょ」
「えっ、龍?」
「そうですよ、パウリナさん。唯の伝説なんですけど・・・そこに龍が住んでいて、旅人が来るのを待っているらしいですよ。強い意思を持ち、死をも飲み込む覚悟を持った旅人を。で、本当に現れたらその人を劫火に包んで、唯の骸骨にしちゃうんですって」
「ふーん、そうなんだぁ・・・ってか結局死ぬんじゃん。なんて底意地の悪い龍・・・」
地理の調査で得た雑学にパウリナは感心する。一方で彼の主人はリコの言葉を受けて、天上に目を遣って何かを思い出そうとしていた。
「峰自体に目的は無いだろう・・・だとしたら・・・」
「・・・白の峰を越えたら何があったけ」
再び漏らされたリコの疑問。一瞬呆けたようにキーラは目をやり、はっとして目を俄かに開く。彼女の脳裏に一冊の本が開かれて、骸骨と三種の魔法の道具を映し出す。
「・・・ヴォレンド。ヴォレンド遺跡・・・エルフの古代都市」
「・・・本気か?」
「それ以外考えられません。潤沢な資金を使用した魔獣討伐は、遺跡までに至る道の安全確保のためでしょう。彼らの目的は遺跡調査にあるのではないでしょうか?」
「或いは遺跡にある何かを探り出すため、か」
確りとキーラは頷く。彼女なりの確信があっての首肯であり、ユミルにとっても殊更抗弁をする気にもならなかった。得られた情報の分析から察するに、彼女の指摘こそが最も考え得る正確な現況だと思ったからである。それでも確認のために、ユミルは問い返す。
「いいんだな?」
「ええ。この線を追っていけば大丈夫です。・・・そんな気がします」
「・・・そうか。皆はどうだ?」
「賛成ぃ」「私も意義はありません」「僕もです」
満場一致。ユミルはキーラを見詰めてゆっくりと頷く。今更その意味を問うまでもなく、キーラは笑みを浮かべた。
「有難うございます、皆さん。では、早速ここにある書物から探っていきましょう
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