第四章、その7の1:いろんな準備
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くれた」
「えへへへ・・・そうですか?えへへ」
先までの緊迫はどこへやったのか、パウリナは顔をにへらと破願させる。常の可憐な笑みを見てユミルは心和ませ、ついついと言ってしまう。
「ああ、そうだとも。今日は難しい頼みに、よく応えてくれた。褒美に、何でも言う事を聞いてやろう」
「ほ、本当ですか!?」
「ああ、聞いてやるさ」
「・・・じゃ、じゃあ・・・その、今夜、私の抱き枕になってくれます?」
「抱きっ!?・・・あ、ああ、良いぞ」
「やったぁっ!御主人大好きぃ!」
「お、お前っ、抱きつくなっ!茶菓子が毀れるっ!」
「まぁ・・・大胆です事。朝までしっぽり行く気なんですわ、きっと」
「そうなんだ・・・凄い・・・」
「キーラ様にも、そういう大胆さが必要ですわね」
「うぅ・・・私は駄目だよ・・・ああいうの、想像するだけで・・・」
「まぁ、純情です事・・・」
からかいを受けながら、キーラは羨望が混じった瞳で、目の前で距離をつめている二人の主従を見遣る。強引な押しに、言葉では嫌がりつつも拒絶はしない態度。キーラが望む恋愛の一体型が目前で披露されており、同時に思わず一抹の諦観が募る。今現在の己と慧卓の間柄では到底成立し得ぬ光景であると。
キーラは指先で額を軽く叩く。これより皆と話を始めるというのに、一人だけ悲観的になってはいられないのである。キーラは額の痛みを切欠として、段々と思考を冷静なものとさせていく。考えるは唯一つ、イル=フードの動静であった。
(・・・イル=フード、結構追い詰められているのかな?噂ではエルフ内を二分するくらい勢力を拡大していると聞いてたんだけど・・・実態は違うと?)
パウリナの話を聞く限りでは、イル=フードは一勢力の長であるに関わらず、配下からの忠誠心は無く、その上保有資金について危険性を孕んでいるようである。
「とりあえず、情報を纏めましょう。先ずイル=フードは配下の方々の忠義を、金で繋ぎとめている」
「それは間違いなかろう。仲介人を介して買収しているのを、前に立ち聞きした事がある。資金に関しては潤沢らしい。こらっ、いい加減離れろっ」
「ええ・・・朝まで一緒でいいじゃないですかぁ」
尚もいちゃつこうとするパウリナは、がさつな手つきによってやや乱暴に引き離される。二の腕を抑えつつも笑みを漏らす彼女に俄かな苛立ちを寄せながら、キーラは続ける。
「・・・次に、西方への魔獣討伐には乗り気ではなく、いやいややっていると」
「そうでしょうね。秋の収穫は一年を通して最も大事な政務の一つですから。これを疎かにするだなんて、たとえ祭上げられた指導者であっても、見逃す事は出来ないのでしょう」
「・・・人員の欠乏ですか。エルフも大変ですわね」
「でも、この森って結構安全な筈ですよね
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