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王道を走れば:幻想にて
第四章、その7の1:いろんな準備
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に近付いて囁く。

「・・・本当に鼠だったのか?」
「・・・・・・泳がせていい鼠だった。俺はそう思ったね」
「・・・その言葉、信じよう」
「な、何をするかぁっ!床に穴を開けおって!散々だ・・・貴様らのせいでっ、私の家も、私も散々だっ・・・!」
「安心しろ。もうここには来ねぇからよ」

 剣を返しながらアダンはチェスターに言ってのける。厭味のある口調で、イル=フードに聞こえるくらい大きく。

「もう潮時だ。手を引かないと俺達が鼠捕りにかかりそうだ。そのうち磔刑に処されるかもな、盗賊みたいに」
「どの口が言うのかね・・・まったく」
「悪いね。一月近く何もしないで篭ってるのは初めてでよ。女も抱けないもんだから、つい不満が爆発しちまった。・・・ああ、あの女の子、結局手が出せなかったなぁ」
「・・・仕方あるまいか。そろそろ我等の存在がエルフの民草に悟られる頃だと、思っていたからな。それに、最初から長居をする心算は無かったしな。・・・イル殿、そういうわけだ」
「ああ、勝手にするがいい・・・!だが金銭は置いておけ!まだ使う予定があるからな!」
「好きにするがいい。我等も、必要な情報は全て手に入れた。・・・そうだな、貴殿が派遣した討伐隊が森に戻って来た次第、我等の方もここを立ち去ろう。これは約定だ、必ず果たす」

 そう言ってチェスターは背を頭を隠すようにフードを被り、家から出て行く。残ったアダンも怒りに頬を紅潮させる老人を軽く見た後、フードを被って踵を返す。秋晴れらしい穏やかな日差しと、嫌悪を隠さぬ忠義深き衛兵の視線を受けながら地面を歩く。

(鼠か。まぁ、好きにすりゃぁいいさ。俺には関係無さそうだからな)

 楽観視する彼の傍を、一陣の風と共に一人の女性が駆け抜けていく。一枚のロープと紫の頭巾を覆った、銀髪の愛くるしい顔立ちをした女性であり、慌てた様子で足早に走り去っていく。アダンは宙を舞う枯葉を暫し見遣った後、飽きが来たのかそっぽを向いて欠伸をかみ殺す。面倒くさげに目端を擦る様は、外観とは裏腹に実に緩い雰囲気が漂っていた。


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 仲間の下へ急ぎ戻ったパウリナは、興奮した口調で己が聞き入れた事を包み隠さずに話していく。屋内に居たキーラを始め彼女の主人であるユミル、リタ・リコ姉弟はそれに傾聴し、きなこ餅にも似た形をした茶菓子を食べながらも、理解に務めようとする。全てが話された後、最初に声を出したのはキーラであった。  

「・・・確かですか?」
「はい、全部自分の耳で聞いた事です!間違いないです!」
「・・・そうですか。御疲れ様でした、パウリナさん。とてもこの情報は参考になります」
「でかしたぞ、パウリナ。前々から、お前もやれば出来る娘だと思っていたんだ。よく働いて
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