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王道を走れば:幻想にて
第四章、その7の1:いろんな準備
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腰の紐帯に挟んでいた短剣を引き抜いて迫ろうとする。チェスターが慌てて彼を羽交い絞めにし、老体の暴走を抑えようとする。

「お、落ち着けっ、イル殿!!刃物を使うなど、貴殿とは程遠き野蛮な行為だぞ!!」
「は、離せっ!!この匪賊崩れを殺さねば、エルフの名誉は穢れる一方だ!!離さねば貴様も殺すぞ!!」
「見ろよチェスター。これがこいつの本性だ。そろそろ俺達も手を切った方がよさそうだぜ。長居しすぎたんだ」
「アダン殿っ、貴殿から喧嘩を売っておいてそれは無いではないか!?」
「ぎぃぃっ、離せぇぇぇえっ!!!」

 老体に似合わぬ蛮声を当てられて、チェスターは怒り混じりに老人の手から剣を取り上げる。抵抗によって手の甲が爪で引っ掛かれ、血が滲み始める。チェスターは乱暴にイル=フードを壁に押し退けると、足元に思いっきり短剣を投げつける。
 上階の様子を探っていたパウリナの眼球、その目前に鋭い刃が床板を貫いて現れ、パウリナは思わず悲鳴を零す。

「ひぃっ・・・!」
(うおおおおおおおおおっ!?!?あ、危ないってぇぇぇえ!!!!)

 慌てて口元を塞いで悲鳴を殺す。存在を勘繰られてはならぬという緊張感を煽るように、上階での言葉が彼女の心臓の律動を掻き立てていく。 

『・・・今、何か聞こえなかったか?』
『・・・ああ、私も確かに聞こえた・・・』
『はぁ・・・はぁ・・・』
『・・・チェスター、剣を貸してくれ』

 剣呑な言葉と共に、ひらりと鞘から剣から抜かれる音が響く。パウリナは顔を引き攣らせて逃げようとした。しかし此処で逃げては余計に拙いと感じたのか、身体の震えを抑え付けながら、必死に鼠の鳴き真似をした。

「ち、ちゅーっ。ちゅーっ!」
『・・・・・・』
「ちゅ・・・ちゅー!!ちゅー、ちゅー!」
『・・・・・・鼠、か?』

 口を尖らせてパウリナは何度も高々と鳴き、蜘蛛のように手足を立たせて仰向けのまま、地面を器用に歩いていく。床板の間から鋭利な刃の銀光が見えた。ほとんど気付かれているようなものである。

(ま、拙い・・・これはさっさと逃げ出さないと・・・)

 そろそろとして慎重に手足を動かす。慣れぬ体勢で身体を運んでいくため、不意に足先が床下まで伸びる柱に当たってしまう。瞬間、上階から剣が一気に差し込まれ、パウリナの直ぐ傍に刃を見せた。危うく彼女の肢体を傷つけるくらいの近さであった。

(ひぃぃぃっ・・・!も、もう盗み聞きなんてするもんかぁっ!!)

 眼を潤ませながらパウリナは何とか魔の刃から逃げ果たし、疲弊し切った身体を軒下から引き上げて急いで建物から離れようとする。帰ったら主人に文句の一つでも言ってやろうと、彼女は心に決めていた。
 アダンは手応えを感じぬ剣を引き抜いて鞘に仕舞う。チェスターが彼
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