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王道を走れば:幻想にて
第四章、その7の1:いろんな準備
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らかに地形が広がっている。そこを陣取るかのように、多くの天幕が張られていた。夥しい数の者達が其処に群れており、陣の中央からは一筋の大きな煙が立ち上っている。よく見ると、それは幾つもの白煙が重なって出来たものであるのが分かる。炊事中であろうか。
 パックは最も近き場所、それでも数百メートル先なのだが、其処に居た男共の格好をまじまじと観察する。ぼやけてよく判別できないが、茶褐色の乱れた格好から、正規兵でも無ければ村人でもないというのが理解できた。

(・・・察しが付いた。ありゃ盗賊か?それにしちゃぁ群れすぎだろ)

 直感を頼りに数を数えてみるが、ざっと見て二千は群れていよう。王都近郊でも中々見られない、大規模な一団である。更によく陣地を観察すると、一箇所には集中して倉庫のようなものが建っているのが見えた。食糧庫、或いは武器庫や厩舎であろうか。これほどまでの規模と成ると、組織性の取れた一団と解するのが自然ともいえよう。必然的に自己防衛の手段も取っているに違いない。例えば哨戒などが、そうであろう。

(やだやだ、こんなのと関わりたくないね。・・・バレないようにさっさと行きますか)

 パックは一団から見つかる前に踵を返して、馬に素早く乗って丘を降りていく。高所に登って幸運だった事は、北東の方に、割と形が保たれた一筋の道を発見した事であった。それこそが彼が求める、エルフ領への道である。 
 一頭の騎馬が何事も無く立ち去っていく中、平野部に築かれた一陣の天幕にて、男達が集っていた。遠くから観察していたパックには分からなかったであろうが、その者達の半分はエルフであり、もう半分は人間であった。何れも形が粗野であり、清らかさや高潔さとは程遠き格好である。パックの予想通りこれは賊の一団であり、尚且つ、人間とエルフの混合団でもあった。

「俺等は長らく、イル=フードに雇われ続けてきた。農家の穀潰しの身分から、森の衛兵にまで昇進してきた」

 一人の壮年のエルフがそう言うと、仲間のエルフ達が次々に頷く。男は更に続けた。

「だがもう限界だ。奴から貰えるのは金、金、金。名誉も賞賛も貰えんしっ、食糧だって確保できるか分からん。なら何故奴の側につく?」
「その通り。それならばいっそ奪う側となった方が簡単に物事が運ぶと言うもの」
「うむ。西の村々はニ=ベリによって早々と守りを固められたが、北は存外脆いものよ」
「ああ。お陰で半月分の食糧を奪えた」

 陣に集うエルフにとって重大なのは二つ。食糧が無ければ生き長らえる事も出来なかったし、これを材料として人間の盗賊団と合併する事も出来なかった。所帯が膨れ上がり、図らずも人間と団結が出来たのが彼らにとっての喜ばしい事であった。
 だが食糧の消費が増えるというのも、また事実であった。

「それは確か
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