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ソードアート・オンライン 穹色の風
アインクラッド 前編
希望を繋いだ勝利
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リトは地に足をつけるや否や、全プレイヤーに向かって叫んだ。

「全員――全力攻撃(フルアタック)! でも、念のため囲むな!!」

 その言葉に、今まで防御に徹さざるを得なかったB隊の面々が、その鬱憤を晴らすかのように雄叫びを上げた。マサキたちも頷き、一気にボスへ肉薄。エギルたちと共にソードスキルを叩き込み、HPゲージを削り取っていく。

 ――いける。このまま、このボスを倒せる。
 ボスを取り囲む全てのプレイヤーがそう確信し、一度振り下ろした武器を追撃のために振りかぶる。そして、その武器を淡い光が包もうとした、その時だった。
 爛々と光るその赤い瞳が怒りに包まれたように輝き、今までただ四肢をばたつかせるだけだったイルファングが、突如立ち上がった。その動作が余りにも突然だったため、キリトの判断も一瞬だけ遅れてしまう。そしてその一瞬に、イルファングは反撃のソードスキルを放った。

 刀スキル水平範囲技、《空斬(そらきり)》。前もってボスを囲むことは避けていたため、《旋車》が発動して全員が被弾、という最悪の事態は免れたが、それでもパーティーの大多数が被弾、後退を余儀なくされた。

「くそっ……!」

 ぐるる、と獰猛な笑みを浮かべるイルファングに向かって吐いたキリトの声を聞きながら、マサキはボスの頭上、赤く輝くHPバーへと視線を投げた。残りは僅かに五%ほどで、マサキたち四人で攻撃すれば、一度で撃破出来るだろう。

(今の俺のHPなら、処理を間違えなければ一度や二度斬られたくらいでゼロになりはしない。……なら、これからのためにも一度試しておくか)

 マサキは脳内で決定を下すと、キリトに近寄って言った。

「俺が斬り込むから、三人で続いて攻撃を頼む」
「そんな、最初が一番被弾しやすいんだぞ!?そこは俺が……」

 マサキはその言葉に首を横に振り、冷静に続ける。

「いや、俺にやらせてほしい。少し、試しておきたいことがあるんだ。大丈夫、皆に迷惑はかけない」
「…………分かった」
「なら」

 ここで、今まで静観していたトウマが口を開いた。その顔にはかなりの不安と恐怖が滲んでいるが、同時に、それよりも強い意思の色が浮かんでいた。
トウマは一呼吸置いて、少しだけ震えた声で話し出す。

「……俺も、マサキと一緒に行かせてくれ」
「……いいだろう。何かあった時にはカバーを頼む 」
「分かった」

 トウマは頷くと、その体をイルファングへとゆっくり回転させる。唇は震え、体の動きは硬く、不自然だ。
 だが、マサキにはなぜそんなになるのか分からなかった。緊張や恐怖によるものであるのは間違いないだろうが、今までの戦闘中、ここまで彼が恐怖に呑まれたことはない。むしろ、そんなものは微塵も感じさせない、熟練した戦
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