第三幕その六
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て俺の怒りの心を燃え上がらせる。悪魔共よ、今すぐにその炎を消せ!さもなければ俺が貴様等の血でその炎を消すだろう!」
叫ぶ。それはまさに狂気そのものであった。愛による怒りに満ちた狂気であった。
「レオノーラ」
「は、はい」
急にレオノーラに顔を向けてきた。
「私は貴女を愛する前からアジュチェーナ、お母さんの子だった。だからあえて言おう」
声に狂気がさらに満ちてきた。
「貴女の悲嘆も嘆願も私を引き止めることはできない。お母さん、今行く!そして必ず救い出してみせる。それが出来なければ・・・・・・」
興奮のあまり言葉を詰まらせた。ルイスもいる。
「死ぬ!死ぬ時は一緒だ!」
「マンリーコ!」
彼の後ろから呼ぶ声がした。見ればバルコニーに戦士達が集結していた。
「俺達の命はあんたに預けたぞ!死ぬ時は一緒だ!」
「よし、頼むぞ!」
「おう、戦いだ!共に戦い、共に地獄に行こう!」
「頼むぞ!すぐに出撃だ!総攻撃だ!」
「よし、敵を皆殺しだ!一人残らず殺すぞ!」
「この城を奴等の血で染め上げろ!そしてこの灰色の岩の城を奴等の血で赤く染め上げ死体で覆い尽くせ!」
「哀れな母よ、今行く!」
マンリーコはまた叫んだ。そして腰の剣を引き抜き天に突き刺した。
「必ず救い出す。さもなければ死だ!」
「戦いだ!共に地獄に落ちようぞ!」
全ての兵士達がそう叫んだ。そして皆戦場に雪崩れ込んだ。こうして最後の戦いが幕を開けたのであった。
「神様・・・・・・」
レオノーラは誰もいなくなった城で唯一人立っていた。彼女に出来るのはバルコニーから戦の成り行きを見守るだけであった。
暗闇の中篝火が揺れ白刃の銀の煌きが映し出される。そしてそこから断末魔の叫びと怒号が聴こえてくる。だがマンリーコの声は聴こえてはこない。
ただそれを見、顔を蒼ざめるしかなかった。しかし彼女はこの時決心していたのであった。
「逃げるわけにはいかない」
そう呟くとバルコニーから姿を消した。何処かへ姿を消した。バルコニーには月の光しか残ってはいなかった。そしてその月の光は白銀から血の様に赤くドス黒い色となっていた。
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