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レンズ越しのセイレーン
Mission
Mission7 ディケ
(5) ハ・ミル村 B~キジル海瀑(分史)@
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「ありがとう、ローエン。――悪い、色々、気遣わせて。心配かけてごめんな。もう大丈夫だから! みんなにも帰ってきてもらおう」

 早口でまくし立て、ルドガーはGHSをホルスターから取り出した。かける相手はユティ。あのメンバーでGHSを持っているのは彼女しかいない。

『もしもし』
「あ、ユティ。待たせたな。話終わったから、帰って来ていいぞ」
『分かった。エルたち連れてそっち戻る。――ルドガー』
「ん、どうした」

 スピーカーが沈黙した。長く、長く、長い間を置いて、ようやくユティがしゃべった。

『今、どんな気持ち?』

 脈絡のない質問をされて立ち尽くした。まるでルドガーがローエンに何を話したか知っているようではないか。

「どんな、って」
『答えて』
「……ちょっとは気が楽になったよ。ローエンのおかげでまだこの仕事、踏ん張れそうだ」
『なら、よかった。それじゃ』

 通話が切られた。ルドガーも通話offのボタンを押し、ホルダーに筐体を戻した。

「どうかされましたか?」
「いや。ユティの奴がさ、今どんな気持ち? って訊いてきて。まさか聞いてたんじゃないだろうなあいつ」
「ほっほっ。ユティさんならシルフ耳でもおかしくありませんな」
「あの中だとミラなんかもそれっぽいよな。というか、ミラがシルフ耳だと俺が困る」
「年頃の男女が一つ屋根の下で生活していると、聞かれてはまずいことも多いですからね――」
「そっちの『困る』じゃねえよ! 年寄りのくせにとんでもないこと神妙な顔して言うなぁ!」
「何話してるの?」

 頭上からの声に驚いて上を見上げる。空中でミュゼが肘を突いて寝転がった態勢で浮いていた。

「びっくりさせんなよ〜」
「ルドガーは飛んだままの精霊はお嫌いかしら?」
「飛んでようが浮いてようが別にいいよ。死角から声かけないでくれってこと」
「――ルドガーさんは実は大物かもしれませんね」

 ミュゼだけでなくエルもルルも、ミラも、ユティもぞろぞろと戻ってきた。

「さっさと終わらせて帰るわよ。荷車以外の方法でね」

 語尾に圧倒的殺気を感じた。ルドガーは首振り人形よろしくこくこく肯いた。

「じ、じゃあ行くか。準備はいいか?」

 否はない。ルドガーはGHSの画面を操作する。分史座標データと、進入のYES/NOボタンを呼び出し、YESボタンを押した。






 進入後に出た位置は、ハ・ミルからそう遠くないキジル海瀑だった。

「これが分史世界……光の霊勢が変化しているのかしら?」

 ミュゼは物珍しさを隠しもせず海瀑のあちこちを眺めている。

「あ! 変なキレーな貝っ」

 エルが波打ち際へと走っていった。ルルもエルを追っていった。ルドガ
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