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皇帝ティートの慈悲
第一幕その九
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第一幕その九

「しかし」
「しかし?」
「知っている筈です。私への新たな恥辱を」
「セルヴィリアのことでしょうか」
「そうです。一度はあの方を愛したというのに」
 ティートのことである。
「彼は貴方が私の心を得るのを妨げました」
「あの方が」
「そうです。若し彼が生きていれば後悔するでしょう」
 巧に己へのセストの気持ちを利用して彼を煽ってきた。
「若しです」
「若し」
「私がまたあの方を愛するようになれば」
「その時は」
「貴方が栄光や野望、愛といったものに動かされないのなら」
 話はさらに続けられる。
「恋敵が私の愛を奪ったことを見過ごすのなら貴方は誰よりもいくじなしで卑劣な者です」
「何故私をそこまで」
 ヴィッテリアに責められ顔を青くさせるセストだった。
「私は。貴女を」
「では見せるのです」
 冷然とセストに告げた。
「貴方のその心を」
「私の心と仰いますか」
「如何にも」
 言葉はさらに冷然としたものになっていくのだった。
「では早く行くのです」
 ヴィッテリアの言葉は冷たいままだった。
「早く。さあ」
「行きましょう。ですが」
 だがここで。セストは言うのだった。
「ヴィッテリア様」
「何か?」
「私に再び心をお許し下さい」
 思い詰めた顔でヴィッテリアに告げたのだった。
「私は貴女のもっとも気に入るようになり貴女の望まれることをしますので」
「私の望むこと」
「そうです」
 言葉は本気だった。
「今貴女の為に行きます」
「私の為になのですね」
「その通りです」
 思い詰めた言葉が続く。
「その眼差しだけに私は全てを捧げます。ですから」
「そうですか。それでは」
 セストの想いは知っているが聞くだけだった。
「行くのです。何度も言わせないことです」
「では・・・・・・」
 一礼して場を後にした。すると彼と入れ替わりにアンニオとプブリオがヴィッテリアのところに来たのだった。丁度彼女は考えごとをしていた。
「ティート帝よ」
 まずはティートのことを呟いた。
「貴方はお知りになられるでしょう。私を愛さなかったことでどれだけ後悔するのか。天界において。未来永劫後悔することになるでしょう」
「ヴィッテリア様」
「こちらでしたか」
「むっ!?」
 二人の声に顔をそちらに向ける。ここでようやくアンニオとプブリオに気付くのだった。
「貴方達は」
「お急ぎ下さい」
「今すぐに」
「何かありましたか?」
「陛下がお呼びです」
 アンニオが彼女に告げた。
「ですから。今すぐに」
「私を。何故」
「陛下は貴女を選ばれたのです」
 今度告げたのはプブリオであった。みれば顔には満面の笑みがある。
「おめでとうございます」
「御祝い
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