13話「月下」
[2/2]
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
「……」
「まだ若い女の子が、1人で4年も一人旅だ? 却下だよ却下。まだ20にもなってない少女が、ひとりでいろんなものを背負うな。大人を頼れ」
今日何度目だろうか。潤んだ瞳が零れ落ちそうなまでに目を真ん丸くしたユーゼリアが、無意識に握った拳に力を込めた。
「俺のことを心配してくれてありがとう。だがな、俺の意志は固いぜ。ただ……」
困惑気味にユーゼリアがアシュレイの目を見つめる。
「まあ今日会ったばかりの素性も知れない男だ。信用ならないのもまた事実。嫌なら、まあ年長者の戯言ざれごとと思ってくれ」
「そんなことッ」
「まあ本人の前じゃあ言えないわな。お前の性格じゃ」
「…ッ」
言葉に詰まったユーゼリアに、それでいいと銀色の頭をぽんぽんと叩く。
立ち上がり、大きく伸びをすると、言った。
「まあ、一晩考えてくれ。今じゃまだ混乱してるからな。とりあえず、今は宿に行こう」
「……ええ」
歩き出したアシュレイの後ろから、ユーゼリアがゆっくりとその背を追う。
そのまま気分よく鼻歌なんぞ歌いながら頭に腕を組み、ユーゼリアの5歩先を彼女に合わせたスピードで歩いていたアシュレイだが、つと足を止めた。後頭部に手を乗せたまま後ろを振り向く。
「そういやユリィさん。宿ってどこ?」
それに一瞬きょとんとしたユーゼリアも、次の瞬間には盛大に吹き出していた。
「ああもう……ほんと、締まらないわ、アッシュ。せっかくあんなシリアスな雰囲気だったのに」
「光栄だね」
ツボに入ったのか、腹を抱えてうずくまるユーゼリアが落ち着くまでのあいだ、アシュレイはひとり鼻歌を口ずさんでいた。
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ