第二幕その十
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私は常に決意している。ならば」
「では陛下」
「どうされるのですか?」
ここで誰もがセストに対して問う。
「赦されるのですか?」
「それとも」
「言った筈だ」
ティートの言葉にはもう迷いはなかった。
「先程な。それは」
「ではやはりここは」
「赦す」
一言であった。
「私のこの心が不変であることを。今ここで宣言しよう」
「陛下・・・・・・」
コロシアムを歓声が包み込む。皇帝を讃える歓声だ。だがその中でセストは。半ば呆然としながらティートに対して言うのであった。
「貴方様は私を許して下さいました」
「うむ」
セストのその言葉に対して頷いてみせる。
「私はもう決めていたのだから。それに従ったまでだ」
「ですが私の心は私を許しません」
これはセストの良心故の言葉だった。
「心は過ちに対して涙していくことでしょう。この記憶のある限り」
「真実の後悔はそなたがそれを為すならばより大きな価値がある」
これはティートがセストにかける言葉であった。
「少しも揺るがぬ忠誠によって」
「永遠の慈愛よ讃えられよ」
「この御方によりローマに幸福を得させて下さい」
「若し私が間違っているならば」
人々の讃える声の中ティートは一人呟いていた。
「全ての罪は私が背負おう。その時には」
その心で以っての全ての慈悲であった。ティートはその覚悟によりセストもヴィッテリアも許したのだった。それが正しいのかをまだ迷いつつも。だがそれを変えるつもりはなかった。己が正しかったと信じたかったからだ。この慈愛が。
皇帝ティートの慈悲 完
2008・8・17
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