暁 〜小説投稿サイト〜
皇帝ティートの慈悲
第二幕その十
[2/2]

[8]前話 [9] 最初
私は常に決意している。ならば」
「では陛下」
「どうされるのですか?」
 ここで誰もがセストに対して問う。
「赦されるのですか?」
「それとも」
「言った筈だ」
 ティートの言葉にはもう迷いはなかった。
「先程な。それは」
「ではやはりここは」
「赦す」
 一言であった。
「私のこの心が不変であることを。今ここで宣言しよう」
「陛下・・・・・・」
 コロシアムを歓声が包み込む。皇帝を讃える歓声だ。だがその中でセストは。半ば呆然としながらティートに対して言うのであった。
「貴方様は私を許して下さいました」
「うむ」
 セストのその言葉に対して頷いてみせる。
「私はもう決めていたのだから。それに従ったまでだ」
「ですが私の心は私を許しません」
 これはセストの良心故の言葉だった。
「心は過ちに対して涙していくことでしょう。この記憶のある限り」
「真実の後悔はそなたがそれを為すならばより大きな価値がある」
 これはティートがセストにかける言葉であった。
「少しも揺るがぬ忠誠によって」
「永遠の慈愛よ讃えられよ」
「この御方によりローマに幸福を得させて下さい」
「若し私が間違っているならば」
 人々の讃える声の中ティートは一人呟いていた。
「全ての罪は私が背負おう。その時には」
 その心で以っての全ての慈悲であった。ティートはその覚悟によりセストもヴィッテリアも許したのだった。それが正しいのかをまだ迷いつつも。だがそれを変えるつもりはなかった。己が正しかったと信じたかったからだ。この慈愛が。


皇帝ティートの慈悲   完


                 2008・8・17

[8]前話 [9] 最初


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ