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皇帝ティートの慈悲
第二幕その六
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第二幕その六

「何でしょうか」
「頼みがある」
 まずはこう彼に告げた。
「いいか、セストを」
「セスト様を」
「私のところへよこすように。いいな」
「畏まりました」
 将校は彼のその言葉に頷いて答える。
「それではそのように」
「頼むぞ。ではな」
「はい」
 将校は一礼してから退室しまたティート一人になった。その顔は先程と比べればまだ幾分か明るくはっきりとしたものになってはいた。
「皇帝になるということは不幸だ。他の者が許されることが許されない」
 それだけ窮屈で制約があるということだ。
「宮殿にいても命は保障されない。穏やかな眠りもない」
 むしろ寝られる時がないと言っていい。
「常に誰かを見ていなければならず見られる。命も何時消えるかわからないのだからな。思えば何と苦しく不安な玉座なのだろうか」
 皇帝の座のことを考え俯く。するとここで先程の将校に案内されたセストが部屋に来たのだった。彼はティートの姿を認めまずは驚きの声をあげた。
「陛下、ここで御会いするとは」
「セストか」
 ここで彼等は互いの顔を見た。そしてそれぞれの顔を見て思うのだった。
「何と恐ろしい御顔になっておられるのか」
「何と俯いているのか」
 互いに思う。
「恐ろしい。僕は」
「罪の為か」
「やはりな」 
 ここにはプブリオも来ていた。彼はティートの顔を見て察したのであった。
「陛下は今心の中で葛藤されている。だがまだセストを信じておられるな」
「セストよ」
「はい」
 既に将校は退室し部屋にいるのは気心の知れた三人だ。ここでティートはセストに対して声をかけたのであった。セストもそれに応える。
「こちらへ来てくれ」
「恐ろしい声だ」
 今ではこう思うのだった。
「この声は」
「来てくれ」
 またティートは言うのだった。
「こちらへ」
「苦しい」
 行きたくとも行けないセストだった。脚が震えて動かないのだ。
「ここにいるのは三人だけだ」
「ええ」
「プブリオのことは気にしなくていい」
 彼についても言及するティートであった。
「信用できる人物だからな。君もそれは知っているな」
「ええ、それは」
 プブリオもまたセストの親友だ。だからその心はよく知っていたのであった。だから今のティートの言葉に頷くことができたのだった。
「よく存じております」
「それではだ」
 それを確かめたうえでまたセストに声をかける。
「話してくれ、君の心を」
「僕の心をですか」
「そう、君の心を」
 セストの目を見て語っていた。
「言ってくれ、この私に」
「陛下にですか」
「私のことも知っている筈だ」
 暗に友情を出した。
「だからこそ。今ここで」
「それは」
(陛下か、それともヴィッ
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