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久遠の神話
第三十八話 神父その七
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「そうなったものだから」
「そうですか。そして貴女を創り出したのは」
「その誰かもわからないけれど」
 だがそれでもだというのだ。
「間違いなくね。この戦いの主催者よ」
「怪物は。貴女は例外ですが」
「剣士と戦いその強さの糧となる存在よ」
 つまり戦いに添えられるものだというのだ。剣士を強くする為の餌だと。スフィンクスは自分達をそうしたものであると認識しているのだ。
「そうでしかないから」
「だから私達のことは知ることができても」
「戦わせている誰かについてはわからないわ」
「そういうことですね」
「全てを知っている存在なぞいないわ」
 スフィンクスであっても人間であってもだった。それは。
「決してね」
「それ故にですか」
「私は私の知っていることしか教えられないわ」
 知らないこともあるというのだ。
「そのことも伝えておくわ」
「わかりました。それでは」
「ではね」
 それではだとだ。また言ってだった。
 スフィンクスは姿を消した。煙の様に。
 礼拝堂に残ったのは樹里と彼等だった。上城は大石を見ていた。
 そのうえでだ。おずおずとだが確かな声で彼にこう言ったのだった。
「あの、神父さんは」
「そうです。戦いについての考えはです」
「僕と同じなんですね」
「そうなります」
 微笑んでだ。大石も上城に答える。
「私達は同志になりますね」
「戦いを止める為に戦うのですね」
「はい、まさに」
「矛盾ですね。確かに」
 大石とスフィンクスのやり取りを思い出してだ。上城はこのことについても言及した。
「僕達のやっていることは」
「本来ならば剣を捨てますね」
「そうすればいいですよね。ですが」
「それは私達だけが助かることであり」
「逃げですよね」
「はい、それになります」
 まさにだ。それでしかないというのだ。
「それで何になるかといいますと」
「何にもなりませんね」
「逃げることも時として必要なのは確かです」
「ですがそれでも」
「他の剣士の方々はどうなるのか」
「無益な戦いで傷つき倒れていきますよね」
「その彼等を見捨てることになります」
 大石は言った。確かな声で。
「私は考えました。それをしていいのだろうか」
「僕はただ。こんな無益な戦いはしてはいけないと思いました」
 この辺りに二人の違いがあった。やはり大石の方が深いと言えよう。
 大石の方が長く生き学んできている。そして神に仕える身である。まだ一介の高校生でしかない上城より遥かに深くなるのも当然だった。
 それでだ。大石は言うのだった。
「私はあえてです」
「ご自身も戦いの中に入られて」
「戦いを止めて終わらせることを決意しました。そしてそれが」
 まさにだ。その行いこそがだというのだ。

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