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巫哉

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まのじゃく)な態度でも、『彼』に好かれているのは分かっている。少なくとも嫌われてはいないだろう。だけど、永くを生きる『彼』を日紅の生に縛り付けることはできないと思う。



 日紅が命を終えた時、『彼』は確かに悲しんでくれるだろう。けれど、悠久を一緒に生きたいと思うには日紅はまだまだ役不足だ。『彼』の世界は日紅の知らない事も多くて、きっと日紅よりも大事に思う人が沢山いる筈だ。それをちょっと寂しいとも思うけれど、嬉しい気持ちの方が大きい。



 『彼』の世界が日紅中心で回っているなんて自惚れたこと、考えるわけがない。



「ヒトはいつの世もかく愚かだ」



 ウロが呟いたその言葉には、なぜか悲しみが混ざっている気が、した。



 ああ、ウロは…。



 日紅の体に重力がゆっくりと戻ってきた。頬に暖かい風を感じた。



 ウロの気配が遠ざかる。今度こそ、去っていく。



「あなたは(ウロ)なんかじゃないよ」



 だって、こんなにも優しいんだから…。



 日紅は囁くようにそう言った。



 (しばら)く静寂が下りた。りりり、と鈴を転がすような微かな虫の音を日紅の耳は拾った。



 ゆっくりと目を開けて、その時初めて、日紅は長い間目を閉じていたことに気がついた。



 手の下にじゃりっとした砂が刺さった。辺りを見渡すと、錆びれた遊具、滑り台…公園だ。どうやら日紅の家の近くにある公園に日紅はいるようだった。小さいころからよく遊びに来ていたところだ。



 いつのまにか、こんなところまで来ていたのだろうか。ウロと話していた時、日紅は確かにアスファルトで舗装された道にいたと思っていたのに。



 なんとなく、きょろきょろとあたりを見回して、日紅は息をのんだ。



 日紅から十足余りも離れた先に、『彼』が、いた。
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