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皇帝ティートの慈悲
第一幕その十一
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「何かおかしいな」
 ヴィッテリアとアンニオはそれぞれ彼を見て言う。だが彼はそれには気付かずその虚ろな目で彷徨うように歩きながら言うのだった。
「何処へ隠れるか。だが裏切り者を隠してくれる場所は何処にもないのか」
「セスト」
 その彼に優しい声をかけてきたのは親友であるアンニオであった。
「どうしたんだい?今の君はおかしいぞ」
「アンニオ」
「落ち着くんだ」
 言葉だけでなく目も顔も優しいものになっている。
「どういう事情かわからないけれど今は」
「アンニオ・・・・・・」
「さあ、どうしたんだい?君は」
「罪を犯した」
 今度は俯いて言うのだった。
「僕はこの上ない大罪を犯してしまったんだ。あの方を」
「あの方を!?」
「まさか」
「言ってはいけません」
 ヴィッテリアは必死の形相でセストの前に出て彼を止めた。
「それ以上は」
「いえ、僕は己の罪を償います」
 今度ばかりは彼もヴィッテリアの言葉には従わなかった。恋よりも良心が勝ったのだろうか。
「この身一つで」
「セスト・・・・・・」
「言いましょう、皆さんに」
 覚悟を決めて顔をあげた。そうして今一同に告げるのだった。
「僕の犯した罪を」
 こうして彼は己の罪を告白したのだった。その罪は己だけのものとしながら。今そのことを告白したのであった。ただ一人の罪であるとして。

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