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皇帝ティートの慈悲
第一幕その十一
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第一幕その十一

「この騒ぎは。何と恐ろしい」
「どうして君がここに?」
「騒ぎを聞いてです」
 素直にこうアンニオに答えるのであった。
「それにしてもこの火事は」
「今部下達が収めてくれている」
 アンニオの連れて来た兵士達が果敢に動いていた。彼等の水とハンマーが炎を消し建物を壊しこれ以上火が起こることを防いでいた。
「どうやら大事には至らないだろう」
「そうだと宜しいのですが」
「うん、まずは安心だ」
「ですが」
 しかしセルヴィリアの顔が曇った。
「この火事は」
「?何か思うところがあるのかい?」
「はい」
 思い詰めたような顔をアンニオに向けて答えるのだった。
「これはまさか」
「おかしいというのか」
「そうです。謀略では?」 
 見抜いていたのだった。彼女は。
「誰かが引き起こしたのかも知れません」
「誰か、か」
 プブリオも来ていた。丁度今彼女の話を聞いて顔を顰めさせていた。
「それこそが問題だな」
「プブリオ様」
「セルヴィリアさん」
 彼はもう政治家の顔になっていた。元老院を預かる男の顔に。
「陰謀ですか」
「私はそう思うのですが」
「ふむ」
 彼はセルヴィリアの言葉を聞いて顔をさらに顰めさせた。
「確かに。これは考えてみれば」
「それでです」
 陰謀と聞いてアンニオも顔色を変えた。その顔で話に入って来たのだ。
「その首謀者は。誰が」
「まさか」
 またセルヴィリアの勘が動いた。
「あの方では」
「あの方!?」
「まさか」
 それを聞いて二人にもわかったのだった。
「今ここにいる筈がない男」
「だとすると」
「ここにはいないのね・・・・・・」
 丘にもう一人姿を現わした。ヴィッテリアである。狼狽した顔で辺りを見回しつつ姿を現わしたのである。従者の一人も連れてはいない。
「セストは。何処に」
「待て、そしてだ」
 プブリオはそのヴィッテリアには気付かずにここでまた不吉なことを思うのだった。
「誰を狙っていたのだ?」
「誰をですか」
「そう、誰をだ」
 アンニオに対して告げる。
「誰が誰を。それが問題なのだが」
「探すのですね」
 セルヴィリアは暗い顔で二人に問うた。
「それが誰かを」
「探さねばならない」
 プブリオの言葉はあくまで政治家としてのものだった。
「必ずな。誰かを」
「幸い私の兵達がいます」
 アンニオはここで部下達のことを出した。
「彼等の力を借しましょう」
「頼めるか」
「是非」
 己の正義感に基いての言葉であった。軍人である彼は。
「お任せ下さい。及ばずながら私も」
「期待させてもらう。むっ」
 セストはふらふらと彼等のところに戻って来たのだった。目は虚ろなものになっている。
「セスト
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