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シャンヴリルの黒猫
11話「滅びる王国」
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た。これが避けられぬ運命なのだということが。
 だが、理性では分かっていても、感情がついていかなかった。ついていけるはずもない。まだ齢12少女が突然の父と姉との別れ――それも、この場合はまず間違いなく死別――をなぜ受け入れられるだろうか。

 泣きじゃくるセフェリネを、2人は優しく抱きしめ、言った。

「わたくしの可愛いセフィ。お姉さまの分まで、しっかり生きるのよ」

「セフェリネ。皇国に復讐などと愚かなことを考えてはいけないよ。私たちは、お前のその優しいところが大好きなのだからな。コルトを護衛につけてある。彼とともに旅をして、様々な生きる知識を身につけなさい。
 王国という形がなくなっても、お前とナルマテリアの民が生き残れば、それは王国そのものなのだ。国とは、すなわち民。民なくして国足り得ぬ。だが、王無くしての国も、また足り得ぬ。生きろ、セフェリネ。最後のナルマテリア王女よ」

 その時、王の間のドアが乱暴に叩かれる。一人の兵士が、息も荒く口早に言った。

「へ、陛下! 皇国軍が王都に侵入しました! もうお時間がありません。この城で我々が足止め致しますので、陛下と王女殿下は――」

「――いや、私たちは逃げぬ」

「し、しかし!」

「既に数多(あまた)の兵がその命を散らした。今更私が尻尾を巻いて逃げるわけにはいかぬ。私たちは、城にて最後まで戦おう」

 なおも言い募ろうとする兵士を、その眼光でもって抑えると、王は娘たちの方を向いて言った。

「共に来るか、火の海へ」

「はい、父上。わたくしの魔鳥で火を凍りつけて差し上げます。ご存分に、炎帝を召喚なさってくださいな」

「ふ、頼もしい限りだ……母に似たな」

「父上の魔法の才も受け継いでおりましてよ?」

「ははは! 本当に、強がりなところまでよく似ている!」

 不敵な笑みを浮かべながらも、不安と恐怖にわずかに震えている姉の頭を撫でると、今度は妹姫に向き直る。

「セフェリネ。これからお前は母上の旧姓を使いなさい。“ユーゼリア=シャンヴリル”。それがお前のこれからの名だ。……コルト!」

「はッ!」

「…頼む」

「はい! 命に変えましても! …ユーゼリアさま、参りましょう」

「…ぁ、ちちうえ!! おねえさまぁ!!」

 近衛騎士のコルトに手を引かれ、裏道へと連れられながらも、幼いユーゼリアは必死に父と姉に手を伸ばした。だが、幼い手は宙を切るばかり。とうとうこぼれた大粒の涙が、幾重にも流れ落ちた。

「わたくしの可愛いセフィ…。どうか…元気で……」

「セフェリネ…セフィ。お前は私たちの誇りだ。……達者でな」

「怪我や風邪には気をつけるのですよ!
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