第二幕その三
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ははじめてだ!」
「間違いない」
シルヴィオは芝居から目を離せなかった。そして確信した。
「俺のことだ」
「じゃあいいわ」
ネッダは言い返した。ようやくカニオを睨み返すことが出来た。
「そんなにあたしが気に入らないのならね」
「どうしろと言うつもりだ?」
「さっさと追い出したら!?」
「それは違うだろうが」
売り言葉に買い言葉になってきた。カニオも睨み返す。
「正直に言え。いとしい恋人のところに駆けつけたいってな」
「フン!」
「さあ、早く言え!」
カニオはさらに詰め寄る。
「その男の名前は。何ていうんだ!?」
「間違いない」
もうシルヴィオには疑いようのないことであった。
「俺のことだ」
青い顔で呟く。だが青い顔をしているのは彼だけであり、皆カニオに注目していた。だからそれに気付かれることはなかったのであった。これは幸運であったと言えるだろうか。
「言わないのか!」
「嫌よ!」
ネッダは言い返す。
「あたしはあんたが望んでいるような女じゃないけれどね、それでも卑怯なことはしないわ!」
「俺を裏切っておいてか!」
「あたしの愛はね、あんたの怒りよりずっと強いのよ!」
「浮気でもか!」
「浮気じゃないわ、本気なのよ!」
化粧の下の素顔が露になっていた。化粧は崩れてはいない。だがコロンビーナの姿は何処にもなくネッダの顔しかなかったのであるから。もう彼女はコロンビーナではなくなっていた。
「何かおかしいぞ」
「ああ、御前もそう思うか」
客達はそんな二人のやりとりを見て囁き合う。
「身が入っているにしろ真剣過ぎるよな」
「そうだな。何か本当みたいな」
「嫌な予感がしてきたな」
「恐ろしいことになるかもな」
「おい、トニオ」
舞台の隅に控えていたペッペが隣にいるトニオに声をかける。
「どうしよう」
「どうしようつってもな」
ある程度カニオをけしかけた彼にもどうしていいかわからなかった。
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