第一幕その三
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も私はあの人の側。このままずっとあの人の側なのかしら」
ふう、と溜息をつく。
「ずっと。小鳥達みたいに空を飛べたら。青い空と黄金色の雲の間を越えて。飛んでいけたら。どんなにいいのか」
鳥になりたい、心からそう思っていた。
「ずっと遠くへ飛んでいけたら。すぐにでも飛んでいけたら。鳥になれたら」
心からそう願う。そこへトニオがやって来た。
「何の用?」
トニオをジロリと見据えて言う。
「ちょっとね」
卑しい笑みを浮かべながら彼女に近付いていく。
「用があってね」
「あたしにはないわよ」
冷たくそう言い返す。
「うちの人のところに行ったら?今頃楽しく一杯やってる頃よ」
「今は酒はいいのさ」
「じゃあ休んでたら?」
「まあ話を聞いてくれよ」
トニオはその鋭い目を隠し、下卑た声で言った。
「俺だってな、人間なんだ」
まずはこう切り出す。
「夢もあるし願望もある。心臓だって鳴るんだ」
「それはあたしもよ」
「まあ聞いてくれ。わかるだろ」
次第にネッダに近付いていく。
「俺が何を考えているのさ」
「別に」
「わからないのか、俺の気持ちが」
「あたしには関係ないからね」
「そう言わないで聞いてくれよ」
やはり下卑た声で言う。
「俺はな、ネッダ」
「何を言うつもりなの?」
「わかるだろ。俺だって誰かを好きになることはないんだ」
「面白いわね」
侮蔑した笑みでそれに返す。
「舞台の練習を今ここでするなんて」
「そんなことを言うのか」
「何度でも言ってあげるわ」
目もまた侮蔑したものになっていた。
「それは舞台で言うのね」
「ネッダ」
「下がった方がいいわよ」
その声と目が険しくなった。
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