Chapter.1 邂逅
9話「帰り道」
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。友人などほとんどいなく、そんな中偶然出会ったのは、記憶喪失で常識に欠ける、だがなぜか放っておけない気持ちにさせる、自分より4つ年上の食の恩に関してちょっと強引な青年。
会話が楽しいと感じたのは、一体いつぶりだろう。
それ程多くを語ったわけでもなく、まだ名前を知って半日しか経っていないのに、ユーゼリアにとってアシュレイとのこの僅かな邂逅は、それまでの日々を灰色と称せるほどに色鮮やかなものとなった。
だが。
(だからこそ……巻き込んでは、いけない)
ふと、太陽が雲に陰る。
「……ッ!」
次の瞬間、ユーゼリアの周りを5人の男達が音もなく取り囲んでいた。
直後、ユーゼリアの顔から色が消える。
「しまった……!!」
*******
「え、も、もうですか!?」
あまりに早い帰還に吃驚している先の茶髪の受付嬢がわたわたとするのを目の端に、アシュレイは先程からのユーゼリアについて考えていた。
(あれは、食の恨みとかそんな事に対したものじゃなかったな。随分と思い詰めたように見えたが……)
帰り道に発した“もうお別れ”。
アシュレイとの別れを心底惜しむような響きだった。
が、アシュレイ自身自分で言うのもなんだが、身元不明な男にひょいひょいと情を移しては、特にユーゼリアのような美しい少女が旅をするのは危ないだろう。それも、ただの記憶喪失者ならまだしも、アシュレイはよりによって魔人の遣い魔なのだ。いくら“元”が付くとはいえ、魔に属するものであった――今も、そうであることに、変わりはない。
アシュレイは、純粋な“ヒト”ではないのだから。
こちらも久方ぶりにあった人間で、まだまだ知りたいことも沢山あるし、ユーゼリアという人物が気に入ったのもあるから離れがたいが、彼女を気に入ったのなら迷惑になるようなことは余計、すべきではない。
遣い魔など、共にいて百害あって一利なし。そんなことは、自分が一番わかっている。
そこまで考えて、自分も案外情が移っている事に気付く。ひとり、苦笑した。
遣い魔だった頃は見下し軽蔑こそすれ、自ら話しかけようなどとは微塵も思わなかったのにもかかわらず、ついさっき、微妙な空気になったとき、アシュレイはそれに慌てた。ユーゼリアとの会話を少なからず楽しんでいた事の証拠だ。
茶髪の受付嬢から渡された報酬金をバッグに入れると、後ろを振り向いてはたと脚を止めた。
(……5人か。良く気配を消しているが、魔力はダダ漏れだな)
不穏な気配がした。
このギルドは町外れにある。時刻は夕方にさしかかろうかというところ。酒場も兼任しているギルドだ
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