Chapter.1 邂逅
8話「駆逐」
[1/3]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
先程から、あたりには剣が空を斬る音、何か水が詰まった革袋が裂かれる様な音、そしてその中の水が辺りに飛び散る音と、お世辞にも美声とは言い難い何かの断末魔しか聞こえない。何とも耳に悪い四重奏カルテットである。
音の中心では、剣を手にしたアシュレイがいた。その動きはまるで、剣舞を舞っているかのようであった。
「よっと」
軽い掛け声と共に、振り向きざま後ろに経っていたゴブリンを縦に斬る。飛竜ですらバターのように切り裂いた剣は、ゴブリンなど空気を斬るように軽く切れる。
勢いのまま一回転して、まわりのコボルトを上下に真っ二つ。木の上から錆びた短剣を構えて落ちてきたゴブリンに、拳を振り上げ同時に首をやや反り剣を交わす。
ちらと視界に、逃げるコボルトの背がある。顎骨が砕ける嫌な音が腕を伝って響くが、気にせずそのまま自由落下で落ちて来る錆びた剣の柄をつかみ、一瞬で投擲体勢に入った。
次の瞬間には逃亡を図ったコボルトの頭は見事パックリと割れ、役目を終えた短剣はコボルトの頭蓋の固さに耐え切れず、金属音をまきちらしながら折れた。
「ほい」
中距離から生意気にも初級魔法ファイアを繰り出してくるゴブリンメイジに、足元にいた違うゴブリンの死体を蹴りつけ、転倒させる。じたばたともがくゴブリンメイジの手から歪な木の杖を奪うと、脳天にその鋭い杖の先を突き刺した。
魔物特有の青い血をまきちらしながら、しかし自身に流れる赤い血は一滴も出さす、次々にゴブリンとコボルト達を屠っていく。全てが文字通り一刀両断され、一撃で殺された死体の山の中央に立つアシュレイを、ユーゼリアは思わず口を手で覆ってみていた。
そもそもここがこんな惨状になったのは、依頼に出されていたゴブリンとコボルトの巣が、双方思ったよりも近くにあったと言う事だった。1つ1つ潰していく予定だったが、思いもがけず2種の巣を同時攻略する羽目となった。
ユーゼリアも、これは致し方あるまいとして自らの召喚獣を呼ぼうと杖を手に取った。本来なら手を出さないでおこうと思っていたものの、なりたてホヤホヤの初心者Fーランカーに1人で2つの巣はキツイから、後でまた少数相手の魔物とやりあえばいいとして。
だがそこで、アシュレイが思いもがけない事を言ったのだ。
『ちょっとお願いなんだけど。これ、俺1人で対処させてくれませんかね?』
思わずぽかんと口を開けてしまったのを覚えている。
通常、この状況にあって確実にゴブリン、コボルトを殲滅できるのは、ランクDクラスのパーティでないと無理だ。1人でやるなら最低でもランクはC。
か
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ