Chapter.1 邂逅
8話「駆逐」
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すり傷すらない無傷で行くならC+は欲しい。
『ちょ、アッシュ、貴方死ぬ気!!?』
『まだ死にたくはないから、死なないさ』
そんな軽い言葉の後に、無防備に、まるで散歩に行くかのような歩きで双方の巣の間に行く。腰からギルドの援助武器として貰った投げナイフを取り出すと、2本同時にそれぞれの巣の暗闇の中にナイフを投げ入れる。まさか、見えていたとでも言うのだろうか。一瞬にして彼の手から消えたナイフが、ゴブリンとコボルトの巣の、どちらからも聞こえる断末魔の声を作り出す。
数秒置いて、耳を塞ぎたくなるような奇声を上げながら魔物共が走り出してきた。身長は1メートル程度だが、その身に秘める筋力は成人男性以上というゴブリンが、怒涛の勢いで巣穴から出てきたのである。中にはぽつぽつと体格のいいゴブリンもいて、ユーゼリアにはそれがゴブリン達のリーダー、ゴブリンチーフだと一目でわかった。
一方コボルトの方の巣からも、錆びた剣や斧をかついだコボルト達が、その犬の様な頭で低く唸りながら出てきた。そこにも一回り大きなコボルト――キングコボルトがみられた。
そして話は冒頭に戻るのである。
「なによ……これ……」
これは余りにも一方的な虐殺――駆逐だった。こんなのがランクF-の訳がない。軽く見積もってBは固いだろう。
ひょっとしたら、彼は高名な剣士だったのではないか? だが、ユーゼリアは「アシュレイ=ナヴュラ」という名の剣士など、噂に聞いたことも無かった。ランクBにものぼれば、大抵異名などが着くのだが、彼を表したような二つ名など全く知らなかった。
グシャッ。
嫌な音と共に、その場に静寂がおりる。
「ふぅ」
自身の剣に付着した青い血糊を振り払って、アシュレイがユーゼリアへと向き直った。その身には魔物の青い血などは僅かたりとも着いていない。返り血すら浴びずに避ける技量。ユーゼリアは何故か、アシュレイに僅かな畏怖を覚えた。
「アッシュ……」
「お待たせ、ユリィ。この後はどうすればいいんだっけ?」
「……あ、うん。ゴブリンもコボルトも耳を持って行けばいいの。片耳だけで十分よ。ただし、右か左か片方にそろえてね」
「はいよ」
その後も何の躊躇もなく耳を斬り落としていくアシュレイの手が、どこか手慣れているのをユーゼリアは見た。が、なんとなく聞きそびれているうちに、5分もするとアシュレイは全ての魔物の耳を取り終わってしまったので、思考を戻す。
見れば、ギルドから貸し出された麻袋はパンパンに膨れていた。いくら小さいサイズのものとはいえ、一体アシュレイが1人で何匹屠ったのかが一目で分かってしまう量だ。100近くあるのではないだろうか。
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