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水の国の王は転生者
第八十九話 ダーボル城塞
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山を三つ越えた所に深い谷があったはずだ、まずはそこに身を隠そう」

「分かった。早めに移動しないと精神切れを起こす、少し揺れるが我慢するように皆に伝えてくれ」

 ダーボル城塞から生えた6本の巨大な足は、ゆっくりとだが急いで山を駆け下りた。

「……揺れるな」

 ヂシュカの魔法で、チェック人を乗せたダーボル城塞は、三つ山を越した所にある深い谷に逃げ、ゲルマニア軍の捜索を振り切ることに成功した。





                      ☆        ☆        ☆






 ゲルマニア騎士団団長のフリードリヒは、ブランデルブルク辺境伯ヴィルヘルムの命令で、前皇帝を殺害した謎の武装組織を追って、ダーボル地方まで出張っていた。

 ブランンデルブルク軍はプラーカを離れボヘニア各地に散り、本来なら決戦戦力であるゲルマニア騎士団にも捜索の命が下った形だった。

「本来ならば我々は温存して、しかるべき時に備えなければならないというのに、口惜しいです」

 火竜の背に乗り、そう愚痴をこぼすのは、フリードリヒの右手でゲルマニア騎士団副団長のシャルルンホルストという若者だった。
 ブラウン色の髪をしたこの青年は、軍才だけならフリードリヒ以上といわれる逸材で、ヴィルヘルムの支援がなければ、団長の座はフリードリヒではなく彼の物だったと、周りの物は噂し、フリードリヒもその事を認めていた。

「そう言うな。魍魎跋扈するプラーカから離れられただけでも幸運だ」

 そう諌めるのはフリードリヒで、彼は巨大な火竜の背に乗り、シャルルンホルストの火竜と大空を併走していた。

 主君であるヴィルヘルムとオーストリ大公アルブレヒトとの間に、どの様な話し合いが持たれたのかフリードリヒは知らない。

「態よくプラーカを追い払われたのだろう。そして政敵の居なくなったプラーカで、オーストリ大公が根回し工作をする事で、次期皇帝への道を確固たる物にする」

 フリードリヒにはこの後に起こることは簡単に予想できた。
 
「団長。何故、団長はその事を辺境伯に報告しなかったのですか?」

「叔父上はそういった小細工はお嫌いな方だ……それに、言ったところで、上手く立ち回れる知恵は持ってはいまい」

「……そ、そうですね」

 シャルルンホルストもヴィルヘルムの人となりは良く知っている為、多くは語らなかった。

「こうなっては手遅れ。残念だが、叔父上は皇帝になる事は出来ないだろう」

「して、団長はこの状況をどう利用されるおつもりで?」

「叔父上を追い落とす為にオーストリ大公に接近する。副団長、誰か連絡役をプラーカに派遣したいのだが、良い人材を選別して欲しい?」

「分かりました。
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