第八十九話 ダーボル城塞
[2/7]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
プラーカ城内にある巨大な会議室。
本来は皇帝を迎えての重要な案件を話し合う為の大会議室だったが、今では二人の野心家が鎬を削る場と化していた。
ヴィルヘルムが踏み込めばアルブレヒトは巧みに"いなし"、アルブレヒトが粗暴な行為を諌めるとヴィルヘルムは広い会議室に響く声で怒鳴り散らした。
アルブレヒトは理論然に攻めても一向に引かないヴィルヘルムに業を煮やし、アルブレヒトは切り札の切る事にした。
「貴様、いち早くプラーカ入りして何をしていた。前の皇帝の親族連中が一向に姿を現さないのはどういう事だ。よもや、どこかに監禁したのではなかろうな?」
「何のことだ?」
「惚けるな。いつもなら小うるさい親類連中が、未だ我らの前に出てこない、お前が手を打ったのであろう? なんて男だ!」
「ヴィルヘルムよ。お前が一番でプラーカ入りしても、お前だって私と同じ事をしただろう」
「む……」
ヴィルヘルムは言葉に詰まった。
図星だったのか、ヴィルヘルムは嫌そうな顔をして、アルブレヒトを睨みつけた。
「お前は分かりやすいからな。自分の栄光の為なら何でも利用する。邪魔と感じれば誰が何であろうとも排除する、そういう奴だ」
「ふんっ!」
「正直な所、ここでお前と不毛な議論をしても無駄な時間を浪費するだけだ。私は皇帝陛下を殺害せしめた輩の退治に向かう。お前はここで遊んでいろ」
「どういう事だ!」
「耳が遠くなったのか? 皇帝陛下を殺害せしめた犯人の討伐に行くのだ」
「何故お前が知っている!」
「知っているも何も、お前がプラーカに入る前、我が軍の一部がその犯人の軍勢を接触したのだ」
そう言ってアルブレヒトはマントを翻し、大会議場を出ようをすると、ヴィルヘルムが待ったをかけた。
「待て! 皇帝の敵をとるのは俺だ!」
ヴィルヘルムはそう言うや否や、護衛の家臣達と共に大会議場を出ると、自分の軍勢に出撃命令を出した。
大会議場に残されたアルブレヒトは一人ほくそ笑む。
(ヴィルヘルムよ、だからお前は馬鹿なのだ。政治とは騙しあい嘘の付き合い……精々何処に居るか分からない賊を追って無駄な時間を潰すがいい、私はプラーカに残って他の選帝侯に対し多数派工作を取らせて貰おう)
謎の武装集団はアルブレヒト自身無視できる存在ではなかったが、輜重隊が倒された事で出兵できる程の食料を準備するには時間が掛かった。
それに多数派工作の前にヴィルヘルム一派をプラーカから遠ざけたかったアルブレヒトは、一芝居打つことで、ヴィルヘルムに皇帝殺害の実行犯を倒させす事を思いついた
いくらヴィルヘルムが、武装集団を倒し次期皇帝の大義名分を主張したとしても、それを決めるのは二
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ