第二幕その一
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させようとしていた。だがそこにまた一人やって来た。
「ホフマン、そこにいたか」
「ニクラウス」
見ればニクラウスがそこにやって来たのであった。ホフマンは彼に顔を向ける。
「捜したぞ、全く」
「また何でだ」
少し肩で息をする彼に対して尋ねる。
「僕の居場所はわかっていたと思うけれどね」
「だけどだ。全く、酒場と彼女にぞっこんみたいだな」
「酒はまた特別だけどね」
彼は粋に笑ってこう返す。
「けれど。それだけじゃないんだ、今は」
「彼女か」
「そう、彼女さ」
彼は頷いてから言った。
「オランピア。君も彼女のことは知っているだろう?」
「ああ」
うっとりとした声のホフマンに対してニクラウスの声は覚めたものであった。
「一応ね」
「何かあまりよさそうな言葉じゃないね」
「君は彼女をどう思っているんだい?」
「天使さ」
彼は言い返した。
「それ以外の何だっていうんだい」
「あのなあ」
ニクラウスはそれを聞いて呆れたような声を漏らした。
「君はそこまで言える程彼女を知っているのかい?」
「勿論だよ」
ホフマンは胸を張って答えた。
「そうじゃなきゃどうしてこんなことが言えるんだい」
「僕にはわかっていないから言えるとしか思えないね」
彼はそれに対してこう返した。
「わかってない、僕が」
「そうさ」
そして答えた。
「何もかも。そもそも話だってしていないんだろう?」
「そんなの話さなくてもわかるよ」
「ホフマン、悪いことは言わない」
今度は忠告めいてきた。
「一度よく見てから考えるんだ」
「何を考えるっていうんだい」
しかしホフマンはまだわからなかった。
「僕は物理学で名を挙げたいんだ」
「それはいい」
「そして彼女に告白するんだ。それの何処が」
「それを待てと言っているんだよ。いいかい、君は物理学と同時に法律、そして詩と音楽、あと絵を学んでいる」
色々学んでいる。ホフマンは多芸と言っていい男だった。
「うん」
「けれど恋についてはまだ知らない。彼女のエナメル色の目を知っているか」
「エナメル色!?」
「そうだ。これが人間の目の色か」
「まさか。まるで人形じゃないか」
ホフマンは笑って答える。
「そしてそこの大通りにある時計屋」
「うん、あそこだね」
「あそこにある木製の大きな時計だけれど。そこから出て来る小さな鶏は彼女に似ているんだ。どういうわけかね」
「一体何を言っているんだ」
ホフマンには訳がわからなくなってきていた。だがそれでもニクラウスは言う。
「その鶏も。エナメル色の目も。人間のものではない」
「そんなこと位わかるよ」
「どれも機械だ。彼女はそれにそっくりなんだ」
「つまり君は彼女が人間じゃないって言いたいのか。
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