第六話
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を見かけたのかセルフィナ嬢が声をかけてきた。
「殿下、いかがなさいまして?」
「はい、先日わたしの責で怪我をした者がおりまして、せめて見舞をと思うのですが、わたしは一人で王宮を出ることを許されてはおらず付き添って頂ける方を探しておりました。」
と、応えておいた。
「それはおいたわしや、殿下お一人の責ではございませんでしょうに。よろしければわたしの係累の者に声をかけてみますがいかがでしょう?」
セルフィナさんは優しいなと思いながら、
「これは願っても無いこと、ここは姫のお力におすがりするよりこのミュアハございません。」
とグランベル貴族風の敬礼を行い出来るだけ丁寧に答えた。
ほどなくドリアス卿の従騎士と従卒が2人やってきて、街区にある治療院へと向かった。
その前に王宮の庭師から許可をもらい見舞の花を摘んだ。それを手伝ってくれたセルフィナ嬢はなんとも可憐であった。
治療院の寝台に横たわるのはグレイドという名のまだ見習い騎士であり、物事が定められた通りに進むならセルフィナ嬢の伴侶となる人物である。年齢に比して大人びた--悪く言えば老けた--容貌をしている。
そしてそれに比例しているかのように落ち着いた人格の人物でもある。
「先日はわたしのためにグレイドに大怪我をさせてしまいました。傷の具合はいかがでしょう?」
上体を起こそうとした時に顔をしかめたのを俺は見逃さなかった。ごめんなさい。
「殿下の御顔を拝見し、ぐっと傷のほうが癒えて参りました。いまはお役に立てぬこと申し訳ございません。そちらの小さなレディにも見舞って下さったこと御礼申し上げます。私はグレイドと申すまだ見習い騎士にございます。」
さらに続けてグレイドはドリアス卿の従騎士とその従卒にも挨拶を交わしていた。
「ドリアスの娘セルフィナと申します。グレイドさま、どうかお体を労ってくださいましね。」
そう言うとセルフィナ嬢は花瓶に摘んできた花を生ける。
「ドリアス様のお嬢様と存じあげず、ご無礼申し訳ございません。」
恐縮し姿勢を正そうとしたグレイドは一瞬苦しそうな表情を浮かべた。身じろぎした彼をセルフィナさんは手ぶりで押しとどめ、御無理はいけませんなどと言ってから続けて
「わたしは領地より王都に上がったばかりの身でございます。グレイドさまがわたしをご存じなくて当たり前のことです。どうかお気になさらず。」
セルフィナさんはすごいなー
俺は兄上から預かっていた手紙と兄上の従卒であるフィンからも預かっていた手紙を渡すとグレイドの元を辞去した。名残惜しそうなグレイドの表情を見て、これはグレイドのほうのフラグが立ったなwとか下世話な事を考えていた。ごめんなさい。
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