第5章 契約
第55話 ハルケギニアの夏休み・昼
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内容に因るモノかは判りませんが。
まぁ、普通に考えるのならば、研究に没頭するあまり食事や入浴が疎かに成っているのでしょう。現在は、魔法学院が夏季休暇中。なので、授業を行わなければならない訳ではないのですから、その分、彼のライフワークに打ち込める状況のはずですからね。
おそらく、キュルケがここに来たがらなかった理由は、彼の発して居るこの体臭の所為ですか。
基本的に日本人で有り、更に毎日の入浴を欠かさない俺やタバサは、嫌な体臭など無縁の存在でしたが、ここは中世のヨーロッパに分類される世界。そして、西洋人の体臭と言うのは、東洋人に比べると……。
そんな、妙に日本が恋しく成って居る俺の心の内など気付きもしないコルベール先生が、先に立って俺達三人を研究室内に招き入れてくれる。其処……光溢れる炎天下の世界から、妙に薄暗い、しかし、蒸し風呂に等しい熱気に包まれた彼の研究室内に侵入した俺達三人の瞳が、その薄暗さに慣れた瞬間、コルベール先生の研究室にキュルケがやって来たがらなかった最大の理由が示される事と成ったのでした。
そう。其処には、男やもめにウジが湧くとは良く言ったもので、その言葉通りの惨状が目の前に広がって居たのですから。
木製の棚には狂的科学者に相応しい薬品らしき液体の入ったビンや、試験管。そして、何が詰まっているのか判らない壺が並ぶ。その隣に目を向けると、造り付けらしい本棚。この世界の娯楽は少ないので仕方がないのでしょうが、壁一面の本棚にはぎっしりと詰め込まれた書物。
そして、其処から本来、食事に使用する用途のテーブルの上に視線を転じると、何かの設計図らしき厚手の質の悪そうな紙の束が無造作に積み上げられて居る。
更に、部屋の隅に置きっぱなしに成って居る黒い布の塊。おそらく、それらは洗濯前のローブたち。
そして、そのテーブルの向こう側。扉から遠い側の椅子にちょこんと座る少女。
見た目から言うと十歳程度。目鼻立ちは東洋風の顔立ち。但し、将来はかなり期待出来る雰囲気。所謂、栴檀は双葉よりも芳し、と言う言葉を体現した存在。
その服装は、正直に言うと、この世界に来てから一度もお目に掛かった事のない白い……絹の可能性の高い、ゆったりとした服装。靴も、この世界では見た事もない布製の靴。
但し、地球世界でならば見た事がある服装、及び靴。
「この服装は、俺が知って居る古代中国の庶民の服装で縞衣と呼ばれる服装に似ている気がする。靴も、同じくその当時の靴に似ているような……」
俺が、その少女を瞳の中心に置いての独り言に等しい呟きを口にする。
もっとも、古代中国文明だろうが、古代シュメール文明だろうが、このコルベール先生が預かっている少女……いや、女童と言い直すべきですか。その女童は、ど
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