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蒼き夢の果てに
第5章 契約
第55話 ハルケギニアの夏休み・昼
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め、ただ、黙って其処に座っているだけの少女。
 流石に、それを実行する訳にも行きませんか。大体、普通の人間でもいきなり泥水を頭から掛けられると怒りますし、パニックに成っても不思議では有りません。そして、その、俺が考えて居る存在の正体を見極めるには、溺れるぐらいまで泥水を掛け続けなければならないのです。そんな理不尽な行動をタバサの見ている前では出来ないでしょう。

 それならば、

【ダンダリオン。彼女は霊力を消耗し過ぎた状態なのか?】

 こう言う場合には一番頼りに成る黒き知恵の女神に【念話】を繋げる俺。
 それに伝承上で彼女は、蚩尤との戦いの時に霊力を消耗し過ぎた為に地上に残って仕舞った、と言う伝承も有りますから。

【肯定。霊力を補ってやれば、彼女は自らの能力を取り返して、自らの世界に帰る事が出来るのです】

 予想通りの答えを返して来るダンダリオン。そして、更に続けて、

【但し、彼女は受肉しているので、契約のくちづけを交わして、シノブとの間に霊道を繋げる必要が有るのです】

 ……と、伝えて来る。
 そんな事は一目見た瞬間に判っていますよ。但し、それは、
 俺は、アイスクリームを机の上に並べながら、その合間に少しタバサに視線を送る。

 ……彼女の目の前で、他の誰かと契約のくちづけを交わす。

【その他に、契約を交わす方法はないのか】

 流石にそれは最終手段ですか。確かに目の前の女童にこれ以上、この世界に留まって居られると、死者が大量に出る可能性も有りますから、他に方法が無ければ仕方が有りませんが、他に方法が有るのなら、そちらの方法を試すべきでしょう。
 まして、ここで違う方法も知って置けば、これ以後に受肉している存在を相手に式神契約を交わす時にも使用可能ですから。

【ふたりの左腕を同時に傷付けて、傷口を重ねあわせて互いの血液の混ぜ合わせを行い、更に、流れ出た血液を特殊な酒に混ぜて飲むのです】

 確かに、その方法ならば呪的な意味で繋がる事も可能だとは思うのですが。左腕と言うのは、心臓に近い、直接的な繋がりを意味していると思いますし、血を混ぜ合わせ、更にこぼれた血を受けて、酒に混ぜて飲むと言う行為も、かなり霊的な意味を持って居る事は理解出来ますが……。
 流石に、それを現状で実行するのは、色々な意味で難しい……、でしょうね。

 それに……。

 何処とも判らない方向を見つめたまま、何の感情も示す事のない表情を浮かべるのみの女童。おそらく、俺達が何をしようとも、彼女に意識が戻る事はないでしょう、と言う雰囲気。

 彼女の状況では、俺のやり方でも、ダンダリオンが教えてくれた方法でも難しいでしょうね。少なくとも俺の契約方法は、お互いの同意がない限り契約を交わす事は無理です。
 
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