アインクラッド編
過去の傷跡
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張が移ったかのようにサチの声も少し震える。
このモンスターの甲羅には極力攻撃を行わない方がいい。ポップ率が午前中に比べて高いこの場所でなら尚更だ。
「いっけ・・・・っ!」
己を叱咤するかの如く鋭い声を発してキリトは〈ジュエリー・タートル〉との距離を詰めた。
見た目こそ普通の亀型モンスターと大きく違うが、攻撃パターンはほとんど変わらない。
前足での薙ぎ払いをキリトはバックステップで避ける。
そのまま頭部へとソードスキルを叩き込み、動きを止めた。
「サチ、スイッチ!」
キリトの声に、サチも距離を詰める。先ほどからだいぶサチの攻撃も上達している。
今度も、単発突きが頭部に突き刺さるはずだ。
そう、キリトだけでなく、サチも思っていた。
「えっ・・・・・?」
ずるっ、と嫌な音がサチの足下で鳴った。
サチは自分が体勢を崩している理由が分からないと言った掠れた声を出す。
前述したとおり、この階層の足場はぬかるみで安定しない。
そして、かなり低確率ではあるのだが、時々足を滑らせてしまうのだ。
しかし、この現象は本当にめったに起きない。
キリトも午前中からの戦闘で足を取られたのはほんの2、3回だ。
付け加えて槍使いであるサチはキリトよりも重装備だ。足を取られる確率は軽装備プレイヤーほど高くなるので、サチに至っては一度も発生していなかった。
それが、このタイミングで運悪く起きてしまった。
体勢を崩したサチの突き込みは大きく狙いを逸らす。
そして槍の先端が甲羅に直撃し、パリイィンッッ! と高い音を立てて宝石の1つが砕け散った。
その音は少し離れた場所で戦っていたアスカ達5人にも届いたのだろう。
全員が顔を強張らせる。
砕け散った宝石の破片が消えることなくフィールドに円形の波紋となって広がっていく。
数秒後、辺りから数十匹ものカメが姿を現した。
そう。
〈ジュエリーシェル〉の甲羅上にある宝石を割ってしまうと、ある一定範囲のモンスターを引きつけてしまうのだ。
キリトも緊張からか、構える剣先がわずかにぶれた。
――――とは言え、危機的状況、と言うほどではない。
囲まれた、といっても、相手は鈍重なカメのみ。
離脱しようと思えば、転移結晶を使わなくても全力で走り抜けるだけでいい。
それに、この数のカメを倒すのにどれだけの時間がかかるかは想像したくないが、攻撃をくらって死ぬような心配をする必要はない。
そう、分かっていた――――はずなのに。
キリトの中で嫌な記憶のふたが開く。
自分のせいで4人の命を危険にさらしたあの時の記憶が、敵に囲まれて怯えているサチの姿が重なった。
サチも同様だったのだろう。
顔を分かりやすく青くする。
怯
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